洒落怖
電車にて

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340 本当に怖いもの sage 2011/09/20(火) 18:24:03.61 ID:MpJsRaLP0
ちょっと報われなさすぎるし、敢えて欠かなかった結末だけど、ついでだから書いとく。

俺はあんまり長く生きられないことに、彼女との再会後に気がついた。
アドバイスは2つあったんだよな。すっかり忘れてたよ。
明るくしてりゃ、大丈夫。そして、受け入れちゃいけない。
同調っていう言葉でごまかして、やっちゃってたんだ。気づいた時には手遅れだった。
ロストチェリーした夜、すやすや寝入ってる彼女を見つめながら、甘酸っぱい想いに寝付けずにいた。
人生はじめての春が名残惜しかったのかもしれん。
翌日仕事なのにと思いながら、相手が寝てる分素直になれて、頬に口付けとかしたっけな。
お母さん、取っちゃってごめんなっていう気持ちになって、意識がそちら側に傾いた。
最近わかったんだけど、俺は周波数を変えるダイヤルを回すみたいにして、無意識に見る見ないをコントロールしてるらしい。
そして、見えたんだ。俺の胸のあたりに、半分体埋まってる赤ちゃんがいて、なんだか笑っている様子。
憑かれるっていうのは、本当に疲れる。けれど、悪いものでないだけに、どうしようという気も起きない。
それどころか、この子もまた、被害者であるわけで。せっかく拾った健在を、俺がどうこうするのは、いくらなんでも、なあ。

思い出したよ、はっきりと。あの師匠のこと。
彼がなんで下手なジョークを交えてまで逃げたか、今は断言できる。
赤ちゃんの前ではだらしなく笑ってたいた。奥さんのことも、凄く好感をおぼえていた様子だった。
肩一発叩いただけで、俺を一時なりとも助けてくれた御人だ、力のある方だったんだと思う。
それでも、彼が、敢えて俺たちを見捨てたのは、彼自身、この赤ちゃんを受け入れてしまう性格をしていたからさ。
受け入れてしまったら、追い出す気にもなれないんだと、彼は自覚があったんだろうな。
「優しい人」っていう彼の言葉が思い出されて、耳が痛い。

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