洒落怖
道連れ

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私が働いている母校の高校の近くにある喫茶店は、立地の関係上、よく母校の生徒さん達が訪れます。
お客さんの五割が母校の生徒さん、四割が母校の先生方、残りの一割が一般のお客様、というところでしょうか。
生徒さん達も悪さをしたり騒いだりするのではなく、ただ純粋に生徒同士の交流の場ーー所謂『喋り場』として利用している様で、
他愛もない雑談から、真剣な悩み相談まで学年を越えて交流している様でした。
私やマスター達スタッフも高校OBという事もあり、勉強や進路の悩み相談をされる事も多々ありました。
また、夏や冬、それに春に卒業・入学シーズン等が特に繁忙期で、
私達だけでは回らない為、アルバイトで私の小学校以来の友人であるエリカちゃんに来て貰う事もありました。
(エリカちゃんは今で言うゆうこりん系のふわふわした天然系の美人さんなので、彼女が出てくれた日は男子高校生の来客率が異様に上がるんです。)

そんな、卒業式を間近に控えたある日、店に一人の女の子が現れました。
切れ長の涼しげな目元にショートカットがよく似合う、本来であればとても快活な雰囲気を持つ子なのでしょうが、
伏せられた瞳は不安げに揺れ、とても元気がない様で。
(何か、大きな悩みがあるのかな・・・?)
彼女はカウンター席に腰掛け、カウンター奥の私とエリカちゃんをちらちらと見ていました。
(私達に相談したいのかな・・・?)
私が思い切って話し掛けようとした時
「あの、聞いてくれませんか?」
彼女が口を開きました。
「私、とってもツイてないんです。」
(ツイでない?成程、それで落ち込んでたのかぁ。)
私は、ツイてない時は誰だってあるし、いつか直ぐにまだ幸運が巡って来る様になるから、と話したのですが。
「そんなんじゃないんです。私、小さい時からずっと、ツイてない・・不幸なんです。」
彼女は、そう言い切ったのです。
116 :夕紅 ◆e/DkDKVoCg @\(^o^)/:2015/03/12(木) 01:04:04.14 ID:1OAocZey0.net[2/8]
私もマスターもエリカちゃんも、最初は、そんな大袈裟な・・・と思いましたが、詳しく彼女の話を聞いてみると。
今まで最低でも一年に一回は居眠り運転のトラックに跳ねられたりする。
(親の運転する車ごと巻き込まれた事故であったりする為、今まで無事でいられたらしく、生身でトラックとの事故に巻き込まれた事はないそうです。)
授業で野球をするとよくボールが頭に当たる。
(バッターが打った球が当たった事もあるそうです。)
頭上から兎に角物が落ちて来る事が多い。
(サスペンスではありませんが、実際に花瓶や鉄骨等が落ちてきた事がある様です。)
そんな一つ間違えたら命に関わるものから
お店に予約をしていた品物がよく間違って売られてしまう。
学校の成績に関わる大きな英語のテストで書いた英作文を、先生が一切書いていない子のと取り違えて0点にしてしまう。
(その後先生は謝って点数をちゃんとつけてくれたらしいのですが、名前も全く違うのにどうやって取り違えたのか未だに謎だそうです。)
等の些細な物まで、その『不幸な事例』は数知れず。
特に、前述した『命の危険を伴う』物に遭う頻度が最近上がって来ており、このままだといつか事故で死んでしまいそうで怖い、とのことでした。
(確かに、命の危険を感じる物は危ないし、怖いっちゃ怖いけど、それでも今まで助かってるんだし、悪運が強いとも言うんじゃないのかな?)
とも、思いました。
ですが、彼女曰く『幾ら悪運が強いと言われても、こう何度も九死に一生を得る体験ばかりしていたのでは命が幾つあっても足りない』
そうで。
彼女と一緒に来た友人は
「気にしすぎ」
「神経質になってる」
「誰だってついてない時位あるよ」
と、大して気にもしていない風でしたが、彼女は至って真剣でした。
「こんなにツイてないのっておかしいですよ!」
絶対おかしい! そう、彼女は息巻いていました。
そして真剣な彼女の話を聞いていると、予約していた品物が売られてしまう事等は確かに誰にでも起こり得る事ですが
頭上から花瓶や鉄骨が高頻度で落ちてくる事等は果たして偶然でそう何度も起こり得るのか。
そう、疑問に思う様になっていました。
117 :夕紅 ◆e/DkDKVoCg @\(^o^)/:2015/03/12(木) 01:06:12.24 ID:1OAocZey0.net[3/8]
彼女も彼女で、誰かに相談したいという気持ちがあったらしいのですが、
丁度そんな時同級生の男子からうちの喫茶店にシスター(エリカちゃんの事です)が来ていると知り、どうにかして欲しいと思って来た様でした。
ですが、エリカちゃんはただのシスターでありエクソシストではないので、当然彼女が望む様な御祓いの様な事は出来ません。
その日は、落胆する彼女を宥めながら話を聞くだけで終わりました。

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