洒落怖
押入れの姉

この怖い話は約 3 分で読めます。

小学生のころ、不思議な体験をしました。

自宅で昼寝をしていると姉に起こされ「押入れの中に誰かいるから見てきてほしい」と言うのです。
両親が不在だったので唯一の男である僕に助けを求めたのでしょうが、正直怖かったです。
ですが年の離れた姉に頼られて幼い自尊心を刺激されたのでしょう、僕は後ろに姉をかばうようにして居間に向かいました。

押入れのふすまはピッタリと閉まっていて、なにもおかしな様子はありません。
「中にいるよ」
後ろから抑揚のない声が聞こえます。
……それが本当に姉の声だったのかどうか、今では思い出せません。

幼稚だった僕は警察や大人を呼ぶという選択すら浮かばず、震える手でおそるおそるふすまを開けていきました。

スゥー……

押入れの片側を全開にすると、女性が倒れているのが見えました。
胎児のように体を丸めて、安らかな寝息をたてているその女性は、しかし紛れもなく姉でした。

僕は弾かれたように後ろを向きます。
すでに誰もいません。
押入れの中に目を戻すと、やはり姉が眠っています。

僕はわけもわからずその場にへたり込んでしまいました。
たった二人の姉弟なので顔を見間違えるはずもないのです。

とにかく姉を起こしていまの出来事を話さねばと伸ばした手が、途中でぴたりと止まりました。
……恥ずかしい話、当時の僕は姉に対して複雑な感情を抱いていたのです。

901 「押入れの姉」 sage 2010/09/09(木) 16:04:39 ID:KzzABe100

どちらかというと厳格な父母に比べ、優しくて気さくな性格。
すでに中学3年だったものの、おそらく同年代の女子と比べても大人びた体躯。
外出先や両親の前では行儀よく振舞っていた姉が、自分と二人きりになった途端に薄着になって抱きついたり
してくるので、そのたびに動揺しきりでした。

そんな姉が、目の前で純白のブラウスと……下はショーツだけという平素にも増して無防備な格好で横たわっているのです。
しかも普段はポニーテールに結ってある黒髪がほどかれ、どこか艶やかな印象さえ感じました。

伸ばした手が、本能のままにあらぬ部位を触れてしまう前に、邪念から逃れるように、僕はふすまを閉めました。

姉は無事なのだから、そのまま寝かせておいてあげればよい。
無理やり自分を納得させてソファに腰を下ろすと、強烈な睡魔に襲われました。
起きていてもなにかできるわけではないのですが、押入れの姉を守らなくちゃいけない、というような使命感に
駆られ、重いまぶたを必死で持ち上げ、何度も首をこっくりさせながら眠気に抗っていました。

そんな攻防がどれほど続いたのか、定かではありません。

ガクン!

突然の衝撃でハッと目を覚ましました。
どうやら体が倒れ掛かっていたようで、あわてて身を起こし、周囲の状況に呆然とします。

真っ赤なのです。

床といわず天上といわず、あらゆる家具や調度品にいたるまで、なにもかも真紅に染まっていました。

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