洒落怖
ある殺人者の話

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何か熱い物が私の体を満たしていった。
殺人者は肩に刺さっているナイフを引き抜く。

『やっとか。やっとこの時がきたのか。』

殺人者は健二の首を片手で掴んだ。
何処に刺そうかと悩んだ。
健二は必死に殺人者の腕をつかみ抵抗していた。
殺人者は首元に狙いをつける。
夢みたいに赤く染まるのか。
次は何処に刺そうか。
健二に向かってナイフを突き刺そうとした。
彼女が私の体にしがみつきそれを邪魔した。

『やっと終わるのに。なんで邪魔するんだろう。』

体の力が抜けナイフが地面に落ちた。
殺人者はいなくなっていた。

健二は私にしがみつく彼女を突き飛ばし、私を持ち上げ壁に押し付けた。

『もう駄目だ。死ぬ。今助かっても、いつあいつがまた現れるかわからない。』

私は目をつぶり抵抗するのを止めた。
車が通る音が何度も聞こえる。

『彼女にお礼を言いたかった。』

そう思いながら死を待った。
歩道橋の上から下を見た。
人が群がっていて、その視線はみな同じ方を見ていた。
道路が赤い血で染まっていた。

私は病院で警官に今日のことを話した。

「たぶん正当防衛が認められると思う。目撃者もいるし心配することはないと思うよ。」

そう言い警官は出て行った。
私が健二を突き落としたのだろうか。
あの場には私と彼女と健二しかいなかった。
彼女は突き飛ばされてからあの場所を動いていなかったと思う。
私がやったのか・・・
無意識のうちにあいつが出てきてやったのか。
終身刑にでもしてもらい私の時間を終わらせてほしかった。
一人残った父親は私を恨んでいるだろう。
私がいなければ家族は幸せだったろう。
私は健二の父親の家に行くことにした。
殺してもらう事に期待を寄せて。

父親は期待を裏切った。
私に何度も謝罪し、

「私でよければどんな罰でも受けます。」

そんなことを言っていたと思う。
期待に裏切られたことがショックだった。

最後に彼女の様子も見に行くことにした。
彼女は眠っていた。
昨日病院に運ばれてからずっと眠っていたと思う。
部屋にいるのは二人だけだった。

「ありがとう。」

部屋を出ようとしたとき、手を引かれた。
彼女は先ほどと表情を変えず眠っていた。
私はまだ生きていたいと思っていた。

数ヶ月が過ぎ、女の子の命日の日に私はある家を訪れた。

「せっかく来てくれたんだ。出前をとったから良かったら食べて行って。」

父親は手を合わせていた私に向かって言った。
早く済ませて帰ろうと思ったのだがせっかくなので食べていくことにした。
いろいろと話していたら、いつの間にか午前0時になっていた。

「今日は時間がたつのが早いね。良かったら今日泊まって行って。」

私は何故か帰りたくなかったのでその言葉はありがたかった。

その夜夢を見た。
あたり一面に花が咲いている場所に私はいた。
丘の上に四人の人影が見えた。
呼んでいる気がしたので私は丘へと向かった。
丘には仲の良い家族がいた。
一人の男の子が私に向かってきた。
男の子の顔は笑っていた。
あの事件がなかったらきっと楽しい時間を過ごしていただろう。
悲しい気持ちになった。
私がこの子の時間を奪った。
ツインテールの似合う女の子が私に向かってきた。
女の子も笑っていた。
この笑顔を見たらさっきまでの悲しい気持ちは何処かに消えていた。
女の子は私の手を握ってた。
家族はみんな笑っていた。
女の子の手はとても暖かかった。

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  • 匿名 より:

    長いしつまらない

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