洒落怖
佇む女

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Uは半ば自暴自棄になって、なにを信じたらいいのかわからず、
ひょっとしてお札かなにかがあれば、『女』から身を守れるのではないか、と
思ったそうだ。
学校の近くの神社は割と大きく、普段からよく神主さんらしき人や巫女さんがいるのを
見かけていたので、そこならお札も買えるのではないかと思ったらしい。

神社に行くと、来るのが早すぎたらしく、まだ社務所も開いていなかった。
Uは神社の階段に腰掛け、呆然と時間が過ぎるのを待った。
やがて、神主さんのような人がやって来て、Uを見つけた。
子供がぽかんと座り込んでいるのを見て、なにごとかと思ったのか、
親切な口ぶりで話しかけてくる。

Uは問われるままに、「変なものが見えるので、お札が欲しい」と正直に打ち明けた。
神主さんはUの様子から、その「変なもの」がなんであれ、尋常ではないことが
起こっているのだな、と察したらしい。

「まあ来なさい」と社務所に案内され、詳しく話を聞かれたそうだ。
誰にも真面目に聞いてもらえなかった話なので、Uはそれだけで涙が出そうになったと言う。
話をすべて聞いて、神主さんは「それだけでは、私からはなんとも言えないが、
そう言うことに詳しい人がもうすぐ来るから、もう一度話してみるといい」と、
Uに勧めた。

その詳しい人とやらは、すぐに来た。
どうやら巫女をやっている人らしく、かなり若いきれいなお姉さんであった。
意外に思いながら、Uはもう一度同じ打ち明け話をした。
お姉さん、仮にAさんは、黙って話を聞いた後、こう言った。

413 12/14 sage New! 2008/10/30(木) 11:02:54 ID:tl4Q/2/Z0
「話を聞くまでもなく、あなたには悪いものが憑いていますね。
見ればわかります。お払いをした方がいいと思いますよ。
悪いことは言いませんから、すぐにお払いを受けなさい。
目を合わせたのが、いけなかったようですね」

Aさんは、どうやら『見える人』であったらしい。
Uは午前中一杯を待たされた後(神社の人にも、いろいろ用事があったらしい)、
午後になってようやく、「お払い」とやらを受けた。
その時はほとんど茫然自失していたので、お払いの代金は? などとは、
考えなかったそうだ。

わけのわからない祝詞を唱えさせられつつお払いを受け、
それが終わってようやく、Uは代金のことに気づいた。
小遣いを取り上げられていたこともあり、財布の中にはわずかな金と定期ぐらいしか
入っていない。
親切にも神主さんも巫女さんも「お金はもともと大して取っていないから」と、
受け取ろうとしなかった。

その後、少しだけ話をした。Aさん曰く、
「神主さんはちゃんとした神職の人だけれど、実際に『見える』わけではありません。
私が見たところ、本当に『その手のこと』で困っている人は珍しい。
ですが、誰でもお払いを受けると、大抵はスッキリして帰ってくれます。
『お払い』を受けたと言う気分の部分が大きいんですよ。
もちろん、神様の助けもあるのですが、気持ちの問題だと言い切ってもいいぐらいです。
それは『本当にその手のことで困っている人』でも同じです。
要は、気持ちの部分が大きいということをちゃんとわかっていればいいんです。
生きている人間に、死んでいる人間がかなうはずがありませんから、
無視するぐらいでちょうどよろしい。
下手に怖がったり、好奇心を抱いたりせず、徹底的に無視しなさい」

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