洒落怖
佇む女

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前述したように、Uは受験勉強に疲れていた。
両親からことあるごとに勉強の調子を尋ねられ、テストがあれば
点数のことばかり注意を受ける。
自分でも、それに疲れきっていることはわかっていた。

それならば、もしやあの『女』は本当に幻覚ではないだろうか?
ストレスのせいで、精神的に参っていて、あんな『女』を見てしまったのでは、
ないだろうか?

一度疑心暗鬼に陥ると、もう止まらなかった。

409 8/14 sage New! 2008/10/30(木) 11:00:42 ID:tl4Q/2/Z0
翌日の月曜、あの道を避けて学校へ行くと、級友たちがいつもよりぎこちなく
彼に挨拶する。
ひそひそと周囲でささやかれる言葉が漏れ聞こえてさえ来た。
「あいつ、ちょっとおかしいよ」「前からおかしいと思ってた」
「勉強のしすぎでさ、頭がちょっと……ほら、親もうるせーらしいじゃん」
噂はあっと言う間にクラスに広まった。

思うより、堪えた。周囲との距離があっと言う間に広がったようだった。
あからさまに、「ねーなにか見える? このクラスの中にもさー」などと、
好奇心と悪意の混じった質問まで投げかけられる始末だった。

当然、授業に集中できるはずもなく、Uはその日、またしても気分が悪くなり、
早退することになった。

彼は電車の中で、真剣に考えた。
あの『女』は自分の妄想で、本当はいないのではないかと。

自分が狂っているのかと思うと、居ても立ってもいられず、Uはフラフラと例の
川辺の道に向かっていた。

『女』を探してその場所へ行った。
『女』はいなかった。

Uはほっとするやら、拍子抜けするやらで、しばらくその場にたたずんでいた。
やはり、自分はストレスから変な幻覚を見ていただけで、
それを自覚したから、『女』のことが見えなくなったのだと思った。

Uはそのままとぼとぼと、家へと歩き始めた。
『女』が見えなくなったのはめでたいが、明日からいったいどういう学校生活を
送ればいいのか、見当もつかない。
クラスメイトたちの視線を思い出すと、それだけで憂鬱になる。

410 9/14 sage New! 2008/10/30(木) 11:01:15 ID:tl4Q/2/Z0
しかし、次の瞬間、Uは声にならない悲鳴をあげて、へたりこみそうになった。
『女』がいた。
なぜかいつもの場所ではなく、違う場所にいたのだった。
『女』はUに気づいたのか、また首だけで振り返り、髪の毛の向こうから見ている。

Uは耐え切れず、走って逃げた。恐怖に負けて後ろを振り返ると、
『女』は顔をこちらに向けていた。

早退して来て、しかも帰るなりトイレでゲーゲーやっていたUを、
母親は体調を心配するというよりは、「勉強に差し支えるのでは?」と心配したらしい。
自室で横になっていたUのところまで来て、「体調管理がなっていない」と言ったそうだ。

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佇む女