洒落怖
佇む女

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402 1/14 sage New! 2008/10/30(木) 10:55:52 ID:tl4Q/2/Z0
おととい昨日と、二回ほど、あまり怖くない話を投下させていただきましたが、
僕がUから聞いた話の中で、一番怖かったものを投下させていただきます。
まとめたらやばいほどの長文(徹夜してしまった)になったので、もしお邪魔でしたら、
スルーしてくださるよう、お願いいたします。

————-

Uはいわゆる『見える人』だ。
そのことについては、僕もなんとなく遠慮して、あまり詳しくは聞けないでいた。
そもそも、Uはそういうことを話すのを、躊躇っている様子があった。
Sが僕を肝試しに誘わなければ、Uは決してそのことを告白しなかっただろうと思う。

ただ、酔った拍子にふと、「昔……」みたいな感じで、
Uが不思議な話をしてくれることがある。
そんな時は、喜んで話を聞くことにしていた。

Uがはじめて自分が『見える人』だと自覚したのは、意外にも遅く、
中学生のころだった。
それまでは体験したものと言えば、せいぜいが金縛りとか、誰かが歩いている音とか、
「気のせいだな」と思える程度のものだ。

ある日、Uが川辺の道を歩いていると、川をじっと眺めている女の人がいた。
帽子をかぶり、うつむいているので、顔は見えない。
その時Uは、「変だな」と感じた。

一見すると普通の女の人なのだが、どうもおかしい感じがする。
と言って、どこがおかしいかと言われると、はっきりとは言葉にできない。
「まあ気のせいだろう。ちょっと疲れているのかもしれない」と、Uは結論した。

その時期、中三で受験を控えていたUは、学校でも家でも勉強漬けの毎日を送っていた。
学校では休み時間も惜しんで参考書を開き、家に帰る間もなく塾へ行く。
家に帰って夕食を食べ、一時間ほど勉強して、床につく。

403 2/14 sage New! 2008/10/30(木) 10:56:33 ID:tl4Q/2/Z0
Uが疲れを覚えるのも無理はない。彼の父親はエリート主義であり、
母親もまた教育ママであったので、逆らう余地などほとんどなかった。
しかも折悪しく、塾の模試の結果が微妙に悪かったので、余計に勉強を
急かされていた時期だ。

次の日、学校に通うため、川辺の道を通っていると、またあの女の人がいる。
昨日と同じ姿勢、同じ場所で川を覗き込んでおり、相変わらず顔は見えなかった。
「あ、ひょっとして、危ない人か……」と、ピンと来た。
昨日どうもおかしいと思ったのは、そのせいに違いない。
そこで、なるべくそちらの方を見ないようにして、通り過ぎた。

しかし、電車へ乗り学校へ行き、塾に通ってから帰ってくると、まだあの女の人がいる。
夜もだいぶ遅い時間なので、さすがに気味が悪かった。
女の人はやや猫背になって、道路に背を向け、立っている。
Uはぞっとして、そこを通るのをやめようかどうか、迷った。
が、ここから道を逸れるとなると、一度引き返さなければならない上に、
家までかなり遠回りしなければならない。
疲れていたUは、「明日もいたらやだなあ」などと思いつつ、
自分の足元だけを見るようにして、そこを通り過ぎた。

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