洒落怖
佇む女

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Uの勉強に差支えが出るのは、あっと言う間だった。
学校では、一気に無口になったUにわざわざ話しかける級友もいなくなり、
小テストの点数もめっきり悪化する。
先生に呼び出されて、「成績が落ちているがなにかあったのか?」と訊かれ、
Uが答えられずにいると、「変な噂話があるが、一度病院に行ってみてはどうだ?」と、
暗に、そのころは今ほど一般的ではなかった、カウンセリングを勧められた。

もちろん、両親もUのことをなじった。集中力が足りないとか、
たるんでるとか、始終小言を言われた。
Uはこらえきれず、恐る恐る、『女』のことを両親に話した。
両親には理解してもらえなかった。
それどころか、性質の悪い作り話、言い訳と取られたらしく、
小遣いまで取り上げられることになった。

U自身も、この時は自分の頭が完全におかしくなったのだと思っていた。
周囲に相談できる人もなく、彼はますます追い詰められた。
最終的には塾すらサボるようになり、図書館など、ひとりでいられる場所に
長居するようになった。

411 10/14 sage New! 2008/10/30(木) 11:01:55 ID:tl4Q/2/Z0
ある日、彼は母親の小言から逃げるように、自室に閉じこもっていた。
せめて少しぐらいは勉強の遅れを取り戻そうと教科書を開くのだが、
まったく手につかない。
気分転換に窓の外を眺めて、Uは悲鳴をあげた。

『女』が、窓の下の道路に立っていたのだった。

思えば、最後に見た時、『女』は場所を移動していた。
その時は『女』が移動したことよりも、『女』が見えたことに気を取られていたが、
それまで動かなかったものが動いたのだから、なにか理由があるに決まっている。
その理由が今判明した。
『女』はUについてきてしまったのだった。

いつから家の近くにいるのか、そこからもう動かないのか、
それともUの元へ来るまで動くのをやめないのか、彼にはなにもわからなかった。
彼の悲鳴に気づいた母親が部屋に入って来たが、狂乱したように窓の下を指し、
彼女には見えない『女』がいるとわめいている息子を見て、逆に母親が
腰を抜かしてしまう始末だった。

その夜、Uは一晩中ボソボソと言う声を聞き続けた。
夜半前までは、どうやら一階で両親が小声で相談し合う声らしかったが、
その後は、窓の外からの声だった。
「ねえ……ねえ……ねえ」と、呼びかけるような女の声だった。
本当に気が狂いそうで、朝日が昇るまで、Uはずっとベッドで震えていた。

Uは辺りが明るくなり、声が聞こえて来なくなったのを確認し、
そっと着替えて家を出た。

412 11/14 sage New! 2008/10/30(木) 11:02:26 ID:tl4Q/2/Z0
家の前の道には、『女』がいた。昨日よりやや近づいているようだ。
Uは本当にどうしていいかわからず、その前を走って通り過ぎ、
思いつくままに、電車に乗った。
それから、学校の近くにあった神社に行った。

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