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俺にはオカルト好きのてっちゃんとぎゅうじというあだ名の親友が二人いる。
「なぁ、こんな話知ってるか?」
てっちゃんの家でゴロゴロしていると、親友の一人のぎゅうじがそう言った。
こいつは怪談話が好きなやつで、どこかで聞いたことあるような話や都市伝説を嬉々としていつも話してきた。
今日のお題は俺たちが住んでいる市にほど近い場所のうわさ話で、今は廃墟になった小料理屋で昔惨殺事件があり、
そこで殺された人の怨霊が、その近くの廃トンネルに出るというものだった。
あぁ、よくある話だなぁ、と思っていると、「いいねぇ、じゃあ後でそこ言ってみようぜ」ともう一人の親友のてっちゃんが言った。
こいつは思い立ったが吉日野郎で、いつもいきなりどこどこに意向だとか、試してみようとか言いだす奴だった。
「じゃぁ俺準備するわ」
そう言ってぎゅうじは人の家の中をあさり始めた。
こいつは礼儀ってものを知らない。
そう俺が思っていると、てっちゃんは「楽しくなってきたな」とつぶやき、一人耳袋を読み始めた。
自分の家が勝手に漁られているのに無視かよ。
こいつは常識が足りないな。
俺はそう思いながら、特にやることもないので漫画の続きを読み始めた。
「おい、そろそろ行くぞ」
そうてっちゃんに起こされた。
いつの間にか眠ってしまったようで、時間は十二時を回っていた。
眠い目をこすりながら体を起こすと、ぱんぱんになったボストンバックを担ぎ、はしゃいでいるぎゅうじが目に入った。
駐車場に止めてるてっちゃんのぼろぼろの軽自動車には、
運転席にてっちゃん、助手席に俺が座り、ぎゅうじは荷物と一緒に後部座席に押し込んだ。
576 二人の親友 旧々吹上トンネル2 sage New! 2010/09/05(日) 16:40:10 ID:4VKz7JIe0
目的は埼玉県に隣接する東京のはじっこの市だ。
僕らの住んでる市からはそう遠くないが、それでも入り組んだ目的理のトンネルまではたっぷり一時間以上はかかった。
その間てっちゃんは他の怪談話をしゃべり続け、ぎゅうじは後部座席で遠足のようにはしゃいでいた。
「ついたぞ」
そう言って山道の安全地帯にてっちゃんは車を止めた。
街灯もほとんどない山道は、能天気なぎゅうじと一緒でもそれらしい雰囲気があった。
「この獣道みたいなところを登ればすぐだよ」
てっちゃんはそう言うと、懐中電灯の明かりをたよりに一人で歩いて行った。
バックからもたもたもうひとつ懐中電灯を取り出すぎゅうじを待って、俺もてっちゃんの後追った。
そこは獣道と呼ぶには道幅が広かったが、泥と落ちた木の枝のせいでひどく歩きづらかった。
てっちゃんに追いつくことができずにいるまま、僕とぎゅうじは噂の廃屋の前までたどり着いた。
「おい、あれ人魂じゃねぇ?」
懐中電灯を俺に奪われ、俺のシャツの裾をつかみながらあとをついてきたぎゅうじが、俺の肩越しに指をさしながらそう言った。