洒落怖
二人の親友

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見れば確かに廃屋にわずかながら残ったガラス越しに、何か光るものが見えた。
ただ、長年風雨に晒され濁ったガラス越しからは、ぼんやりとした光しか見えなかった。
「おせーよ」
そう人魂が僕らに言った。
人魂の正体は先行して廃屋探検をしていたてっちゃんのたばこの光だった。

その後僕とぎゅうじも廃屋を探検したが、抜けた床板の下にはエロ本がごろごろ転がっているは、
そこらじゅうに真新しいポテトチップスの袋などのごみが転がっていて、とてもじゃないが何か期待していた雰囲気ではなく、
壁に書いてあった「悪気羅刹」の下に「悪鬼羅刹だ馬鹿」と落書きをしているてっちゃんを促し、僕らは早々にそこを後にし、目的のトンネルに向かうことにした。

577 二人の親友 旧々吹上トンネル3 sage New! 2010/09/05(日) 16:41:41 ID:4VKz7JIe0
目的地のトンネルは、廃屋から数十メートル程進んだところにあった。

入口は何重にもフェンスと有刺鉄線で囲まれ、入口の扉には南京錠がかかっていた。
しかしフェンスと有刺鉄線は切断され、南京錠はどうやったのかわからないが外れてぶら下がっていた。

「偉大なる馬鹿野郎の先人に感謝」
そうてっちゃんは言いながらフェンスと軋む鉄製の扉をこじ開け中に入って行った。
僕とぎゅうじも今度は遅れずにそのあとに続き中に侵入した。
「ペンチとガスバーナーが無駄になったなぁ」
ぎゅうじのそのつぶやきを僕は無視した。

トンネルの中は石がむき出しになっていて、方々から染み出す水のせいでどこもかしこも水浸しだった。
その様子から、このトンネルは岩盤をくりぬいて作ったのだと僕は想像した。

「おっ、ここ座れるな」
てっちゃんはそう言うとトンネルの中ほどで小高く盛り上がり、水につからず乾いている地面を懐中電灯で照らした。
その場所に着くとぎゅうじがバックからビニールシートを取り出し、その中央に長い蝋燭を立て火をつけた。
こいつは用意がいいというか、なんというか。

「さて、始めようか」
てっちゃんはそう言うと腹から「百物語」と書いてある本を取り出した。
「まず俺から読むぞ」
そう言って読み始めようとするてっちゃんを制止し、俺が眠っている間に何を計画していたかを聞いた。
どうやら、ただ行っても面白くないと思った二人は、目的地で百物語を交互に読み、より雰囲気が出るようにと考えていたらしい。
実に迷惑な話だ。
とはいえ、このまま水浸しのトンネル内にただじっとしているのも気がめいるので、俺はしぶしぶその提案に参加することにした。

578 二人の親友 旧々吹上トンネル4 sage New! 2010/09/05(日) 16:43:55 ID:4VKz7JIe0
物語が三十ほど読み終えたあたりで、「しぃ!ちょっと静かにして!」とぎゅうじが声を殺して言った。

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