洒落怖
二人の親友

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俺は本当に何か出たのかと思ってこわばり、てっちゃんは逆に目をきらきら輝かせてあたりをきょろきょろと伺っていた。
「……ジだって……けるよ……き、へいき……」

その声は僕らの入ってきた入口のほうから聞こえた。
その声に僕は胸を撫で下ろし、てっちゃんは「ちっ!」と舌打ちをした。
明らかに心霊スポットに肝試しに来ている後続組の声だった。
しかも声から察するに、男女が複数いるようだ。
こっちは男三人で心霊スポットに来てるって言うのに、まったく、女連れだなんて無粋なやつらだ。
僕が憤慨していると、てっちゃんにぎゅうじが何やらこそこそ耳打ちをしていた。
そしてにやっと笑い目を見合わせた二人は、ふっと蝋燭に息をふきかけ火を消した。
あたりに漆黒の闇に覆われ、時折たれる岩清水の音と、不愉快な後発組の声だけが聞こえていた。

やがて後発組の懐中電灯の光がトンネル内を照らし始めた。
「超怖いんだけどー幽霊」
「マジ幽霊とかワンパンだし俺」
「絶対イケルしーケイタなら」
「マジ余裕だから俺」
と倒置法をやたら多用する声が聞こえ始めた瞬間、

「う お お お お お お お ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ!!!!!!!」

とトンネルがビリビリ震えるほどの大声が聞こえた。
『ギャー!!!!!!!!!!!!!!!』
と後発組がバタバタとにげる足音が聞こえ、僕が何が起こったのがわけもわからず唖然としていると、
『大~成~功~』
と言ってハイタッチをしている二人がいた。
この二人は全く気がくるってる。
「可哀そうだから種明かしに行こうよ」
俺がそう促すと、二人は腹を抱えて笑いながら、ビニールシートを片付け立ち上がった。

579 二人の親友 旧々吹上トンネル5 sage New! 2010/09/05(日) 16:45:46 ID:4VKz7JIe0
僕らがトンネルから出ると、入口に女の子が一人、
その先の道に女の子がもう一人、そのさらに先の廃屋あたりに四人ほどがいるのが見えた。
「大丈夫?」
そう手を貸し入口の女の子を助けると、「え?マジ?人間?」とその子は言った。
当たり前だ馬鹿。
そう思ったが言えないので、「ごめんごめん」と俺はその子にヘラヘラ笑いながら謝った。

てっちゃんとぎゅうじは事の説明に残りのところに歩いて行ったが、どうやら勘違いした一人の男がぎゅうじに殴りかかっているようだ。
たぶんワンパンのケイタだろう。
どっこい残念なことにぎゅうじは妙に喧嘩だけは強く、ひょいひょいかわしながら「まぁ、落ち着け」と余裕だった。
俺が二人の女の子を助け終え、てっちゃんとぎゅうじに合流するころにはその男も殴りつかれ、すっかり意気消沈して体をかがめて肩で息をしていた。
後発組は全部で男女6人で、どうやら恋人同士3グループで遊びに来たようだった。

十数分かけててっちゃんが事情を説明し終わると、「マジビビッたし」と言いながら全員が安堵の溜息を吐いた。
「でも余裕だったぜ俺」
とその後一番後ろにいた男が言ったが、「ケイタあんたマジ後で殺すから」と俺が助けた女の子の一人に言われていた。
ケイタ、情けない奴め。
その後談笑タイムが始まり、
ここじゃなんだから、道を下ったところにあるファミレスで少ししゃべろうということになった。

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