この怖い話は約 3 分で読めます。
俺達は坊さんに頷いた。
ここから、坊さんの話が始まる。
結構長くて、正確には覚えてない、所々抜け落ち部分があるかも。
坊「この土地に住む者も、臍の緒に纏わる言い伝えを深く信じておりました。
土地柄、ここでは昔から漁を生業として生活する者が多くおりました。
漁師の家に子が生まれると、その子は物心がつく頃から親と共に海に出るようになります。
ここでは、それがごく普通のしきたりだったようです」
坊「漁は危険との隣り合わせであり、我が子の帰りを待つ母親の気持ちは、私には察するに余りありますが、それは深く辛いものだったのでしょう。
母親達はいつしか、我が子に御守りとして臍の緒を持たせるようになります」
坊「海での危険から命を守ってくれるように、そして行方のわからなくなったわが子が、自分の元へと帰ってこれるようにと」
俺「帰ってくる?」
俺は思わず口を挟んだ。
坊「そうです。まだ体の小さな子は波にさらわれることも多かったと聞きます。
行方の分からなくなった子は、何日もすると死亡したことと見なされます。
しかし、突然我が子を失った母親は、その現実を受け入れることができず、何日も何日もその帰りを待ち続けるのだそうです」
坊「そうしていつからか、子に持たせる臍の緒には、”生前に自分と子が繋がっていたように、子がどこにいようとも自分の元へ帰ってこれるように”と、命綱の役割としての意味を孕むようになったのだと言います」
皮肉な話だと思った。
本来海の危険から身を守る御守りとしての役割を成すものが、いざ危険が起きたときの命綱としての意味も持ってる。
母親はどんな気持ちで子どもを送り出してたんだろうな。
坊「実際、臍の緒を持たせていた子が行方不明になり無事に帰ってくることはなかったそうです」
坊「しかしある日、”子供が帰ってきた”と涙を流して喜ぶ1人の母親が現れます。これを聞いた周囲の者はその話を信用せず、とうとう気が狂ってしまったかと哀れみさえ抱いたそうです。
何故なら、その母親が海で子を失ったのは3年も前のことだったからです」
B「どこかに流れついて今まで生きてたとかじゃないんですか?」
坊「そうですね。始めはそう思った者もいたようです。そして母親に子供の姿を見せてほしいと言い出した者もいたそうなのです」
B「それで?」
坊「母親はその者に言ったそうです。”もう少ししたら見せられるから待っていてくれ”と」
どういう意味だ?
帰って来たら見せられるはずじゃないのか?
俺はこの時、理由もなく鳥肌が立った。
坊「もちろんその話を聞いて村の者は不振に思ったそうですが、子を亡くしてからずっと伏せっていた母親を見てきた手前、強く言うことができずそのまま引き下がるしかできなかったそうです」
坊「しかし次の日、同じ事を言って喜ぶ別の母親が現れるのです。そしてその母親も、子の姿を見せることはまだできないという旨の話をする。
村の者達は困惑し始めます。」
漁に小さい子供を連れて行っても足手まといになるだけだから連れて行かないよ