子どものころの怖い話
鬼伝説の山

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そして俺たちは当てもなく突き進む。
しばらく全力で走り続けた。
ランダムに曲がり、獣道さえも通った。俺たちは岩陰になっているところで一旦止まった。
息を整える。
クロボウの姿はなかった。男が完全に追い祓ったとも思ったが油断はできない。
顔を真っ赤にした俺たちは岩の奥に隠れた。そうしなければ安心できなかった。
「もう追って来てないんだろ」
「わからない。また来るかもしれない」
「どうするんだよ、もう日が暮れる。早く森を出ないと」
「シッ!」
俺は枝の折れる音を聞いた。クロボウだ。
Uも口を噤む。岩の隙間から向こう側が見えた。
と、黒い影が重なった。距離があって全体像が見える。
頭部らしき箇所を身体ごとくねらせて、左右に巡らせている。
俺たちを探しているのだ。
俺が覗いていた隙間と頭部の前面が合わさったとき、動きが止まった。
「見つかった」俺は悟った。
刹那、クロボウが跳ねてくる。「出ろ!」
俺は叫んで、岩から飛び出した。Uも続く。
だが岩と岩の間は狭く、俺とUの体がぶつかりあって、とうとう俺は倒れ伏せてしまった。
この時の恐怖ったらない。今までで一番恐ろしい瞬間だった。
ちびっていても仕方なかっただろう。
クロボウからあの手が伸びてきた。
起き上がろうとしていた俺の足を掴みそうになった時、
「あぶねぇ!」とUが俺に体当たりして、俺は無事触手から逃れることができた。

クロボウはまた、そのまままっすぐに跳ねていく。
小回りが苦手らしい。
俺に覆いかぶさったUはその場に尻餅をついていった。
「早く帰りたい」
まったく同じ心境だ。
「ごめん、助かった」――俺は咄嗟に口を噤んだ。
だがすでに遅かった。
絶対にいうことがないと確信していたことを今口にした。
俺はこのときすぐには気づかなかった。
Uの表情は悲痛なものに変わり出していた。
見れば、Uの足先が痛々しいことになっていたのだ。夏ということもありUはサンダルだった。
Uの親指の爪の間に枝が突き刺さっていた。
枝の侵入によって爪が上に盛り上がっている。
血は溢れ出て他の指まで染めていた。見ている俺の足までじんじんしてきた。
Uが歯を食いしばりながら、悲痛な唸り声と共に枝を抜く。
すぐさまTシャツを破り、親指に巻きつけた。
血が浸みてとたんに赤くなった。
「うぬぬうぬぬぬぬうぬぬ」
クロボウだった。このときほどタイミングの悪さを呪ったことはない。
Uがクロボウの手につかまれた。
そのまま引きづられる。
俺はとっさにUの腕を掴んだ。
引き戻そうとするが、尋常ではない力がUを持っていく。
このままではUの手足が千切れるとさえ感じたほどだ。

Uが涙ごえで叫んだときだった。
上空から唐突に岩が落下してきた。
見事に下敷きになったクロボウの手が緩み、Uが解放される。
男の力だろう。
そんな芸当ができるのにいつもギリギリで助けることに俺は苛立ちが募った。
Uを起こそうと思ったが、動けない様子だった。
「やばい腰が抜けて、動かない。それに足も痛い」俺は逡巡した。
Uは歯を食いしばっていた。
「お願いだ。蹴り飛ばしてくれ。そうすれば勢いづくかもしれない」
俺は、前方のわめくクロボウの姿を一瞥して、息を飲むと、Uのいう通りにした。
そして何とか走り出したUと共に逃げ出した。

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  • 匿名 より:

    中二?乙

  • 匿名 より:

    長い上につまらん

  • 匿名 より:

    序盤は面白かったのですが途中から中二病感がでてきて全然面白くなかったです。

  • 匿名 より:

    コメント同意。婆のしゃべり方、標準語なのに「じゃ」とか不自然だし魔法陣のくだりはしっかり萎えて途中でやめた。中二病は早いとこ卒業しなね

  • 匿名 より:

    面白かった

  • 匿名 より:

    厨二好きなら面白いんだろうな

  • 匿名 より:

    魔法陣あたりでファンタジー感満載

  • 匿名 より:

    この程度で長いとかw

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