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そうこうしている内に寺が見えて来た。
遠目でも判るようなボロ寺だ。
小さい寺だ。
目測で5~6畳だろうか?その後ろにちょっとした物置がある感じだ。
『さてと』
住職は正面の扉の南京錠を開けた。
住職が扉を開いた。
瞬間!懐かしい耳鳴りがした。
“アタリ”だ。
やはり赤い仏像はただ者ではないらしい。
ピリピリと突き刺す空気を肌に受けながら中に入る。
『老朽化が進んでいてね。大分取り壊してしまって今では物置として此処が残ってるだけさ』
中はガランとしていた。
327 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/04(月) 01:38:42 ID:nuJ7Q8cXO
住職は正面奥の戸棚を開けガサゴソやっている。
『お、有った有った』
『ほら、これが赤い仏像だよ』
住職から赤い仏像が手渡される。
ついに待ちに待ったご対面だ。
だが、2人の出逢いは予想に反して感動的な物では無かった。
『黒い』
それが正直な感想だった。
赤黒いと言うより黒いのだ。
328 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/04(月) 01:39:59 ID:nuJ7Q8cXO
『これがホントに【赤い仏像】なんですか?』
漆塗り…とまではいかないが、それなりの鮮やかさを予想していただけに期待外れな気がした。
『あぁ、間違いない。それが正真正銘【赤い仏像】だよ』
『薄暗いせいかもしれないな。外で見て来てごらん』
言われるままに外に出てまた眺める。
なるほど。
確かに少しはマシになった。
でもまだ何か違う。
もっと禍々しくおどろおどろしい物を想像していたがあまりに“普通”なのだ。
匂いは確かに変ではあったが、ただ単にカビ臭いだけのような気もした。
改めて仏像をよくよく見ると、本にあったように涙の跡のようなモノは確かに在った。
だが、それだけだ。
変な気配も感じない、何かの声を聞く事もない、動き出す気配なんて微塵も無かった。
自慢のアンテナも不調らしい。
期待外れと言うより拍子抜けに近い感覚に肩を落としつつ赤い仏像を住職に戻した。
『どうだった?』
『どうも何も普通でした』
『だから言っただろう?あんな仏像を観てどうするのか?と』
『はぁ…』
あからさまな落胆ぶりに気を利かしてくれたのか、【赤い仏像】に詳しい婆さんを紹介してくれるらしい。
329 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/04(月) 01:42:06 ID:nuJ7Q8cXO
また明日尋ねなさいと言われた。
有り難い話だが、正直ハズレである事を悟った俺のお熱はすっかり冷めていた。
住職のチェックが終わり。
帰路に着く。
ワンワン。
撫でる。
テクテク。
歩く。
宿に戻った俺はゴロンと寝転んだ。
湯と食事だけが疲れを癒やしてくれた。
気付いたら夜が明けていた。
どうやら爆睡してたらしい。
朝食を軽く済ませ、一息ついたところで何をしようか考える。
ふと携帯に着信あり。
またもや携帯から唸り声が響く。
唸る携帯を脇に投げ寝転がる。