この怖い話は約 3 分で読めます。
324 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/04(月) 01:29:04 ID:nuJ7Q8cXO
『お寺ですか。お寺なら近くに○○寺という寺が在りますが』
『なるほど。でしたら其処を訪ねてみます。お寺にはどなたか居りますか?』
『あぁはい。住職様が一人』
________
仲居さんに書いて貰った寺の名前と簡単な地図が載った紙を広げ寝転がる。
脇に転がる鞄から郷土史の本を開く。
【赤い仏像】
×県△市○○村
寺院に眠るその仏像の異様さたるや筆舌に尽くし難い
曰わく“赤い仏像”曰わく“紅仏様”曰わく“血仏”
大きさは高さ一尺、幅は約三寸
容貌は赤黒く強い異臭を放っている
あまり気持ちの良い代物ではない
住職によればその仏像は時折血の涙を流すらしく、確かに目尻から何かしら垂れたような跡は確認出来た
聞くところによると、かつてはこの仏像を家から家へ回す風習が在ったらしい
更に古い話では、この仏像は元々呪詛の祭具として…
ここから下は読めない。
子供の悪戯だろうか?何やら赤いクレヨンのようなもので塗り潰されている。
この続きをどうしても確かめたくて俺はこうして此処に来たのだ。
腰を上げると早速寺を訪ねようと出掛けた。
山々には紅葉した木々が生い茂り、澄み切った川が音色を奏でる。山紫水明とはこのことだ。
325 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/04(月) 01:31:02 ID:nuJ7Q8cXO
煩わしい日常の喧騒から離れ、穏やかに流れる時に酔いしれていたが、いかんいかんと我に戻る。
寺はホントに近くに在った。
赤い仏像を見せて欲しいと庭掃除をしていた住職に申し出た。
『赤い仏像か』
口振りからこの住職は知っているらしい事が見て取れた。
『一目観るだけで良いんです』
『あれなら、今は此処には無いんだ』
『山の方の寺に移していてね。今は其処に保管しているよ』
『なんとかなりませんかね』
『あんな仏像を見てどうするんだい?』
俺は例の本を渡し一部始終を説明した。
『ふむ、丁度赤い仏像も含め何か盗まれていないか確認しなければと思っていたところだ、私が案内しよう。支度をするから暫く待ってなさい』
ついに【赤い仏像】と御対面だ。
俺は遠距離恋愛の彼女と久々に逢うかのような気持ちの高ぶりを感じていた。
住職の運転する軽トラに乗り山の方へと走って行く。
山道を登っていると中腹辺りに開けた駐車場が在り其処に車を停めた。
『ここからは歩きだ』
50~60代だろう住職は軽々と山道を登って行く。
対する俺はやはり日頃の運動不足からか既に息が上がっていた。
326 本当にあった怖い名無し New! 2009/05/04(月) 01:37:07 ID:nuJ7Q8cXO
途中、不意にワンワンと吠えられビクリ!とする。
犬だ。
住職によるとこの犬はここで飼われているらしく、名前は太郎。
麓の近所に住む婆さんが毎日餌をやりに来るらしい。
『番犬にもなる賢い奴さ』と笑いながら頭を撫でていた。