洒落怖
赤い仏像

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372 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/04(月) 07:24:59 ID:nuJ7Q8cXO
>>366
『水を』と答えるとおばさんは台所へ向かった。
『しっかしお前さん、いったい何があったね?』
住職の問いに答えようとすると、またあの不気味なひゃひゃひゃという笑い声が聴こえた。

『“見た”んじゃろ?』
お婆さんはニタリと笑った。

『お婆さんはアレが何か知ってるんですね?』
『アレが例の魔物ですか?』

お婆さんは静かにだが深く頷いた。
『その足の鋸のような歯形は間違いない。ヒトアラズの仕業じゃ』

『ヒトアラズって言うとあのヒトアラズか?』
住職が口を挟む。

『ほうじゃ間違いない』

『そのヒトアラズって言うのは?』

『訊きたいか?』
ニタリと笑う。
俺はゴクリと喉を鳴らし頷いた。
婆さんは人形を寝かせた。

373 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/04(月) 07:26:01 ID:nuJ7Q8cXO
>>372
『昔昔の話じゃ。ある日『ハイどうぞ』
間が悪い。
お婆さんが話し始めたその時におばさんが水を差し出した。

『あ、ありがとうございます』

『ごゆっくりね』
おばさんは部屋を後にした。
気を取り直し再び話を訊く。

『昔昔の話じゃ。ある日集落に不気味な牛の子が生まれた。その牛の子、なんと人の形赤子の姿をしとった』
『人々はこれは禍の前触れじゃと牛の子をバラバラにし埋めてしまった』

374 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/04(月) 07:27:59 ID:nuJ7Q8cXO
>>373
『じゃが、それからというもの集落に全く子が出来んようなった。人々は牛の子の呪いじゃとはやし立てた』
『そこで、牛の子を供養する為に犬、猫、狸、兎、蛇、熊、梟、鴉、鷹などなどありとあらゆる獣を七匹ずつ生贄とし、生き血を墓に撒いて飲ませた』
『それから集落は子を授かり呪いは見事に破られた』
『しかし呪いを破ったは良いがこの儀式は新たな厄を呼び寄せた』
『ある集落の農夫がお供え物をしに行った時の事じゃ。シシガコミまで来るとその者はおっ魂消た』
『なんと!牛の子を埋めた場所にはぽっくりと穴が空いておるではないか!驚く農夫の耳に唸り声が届く』
『向き直るとそこには!化け物がおった!』
『走った走った、農夫は息も絶え絶え家に着くと、集落中に化け物の話をして回った』
『じゃがそんな話、だぁれも信じやせん。農夫がうなだれておると今まで聴いた事も無いおぞましい遠吠えが聞こえる』
『集落の人々はびっくらこいて皆家々を飛び出し広場に集うた』
『人々は遠目に獣を見た。魔獣じゃった。獣は己の存在を誇示すると満足したのか森に走って消えた』
『それがヒトアラズじゃ』

『お婆さんの言っていた“面白いもの”ですか?』

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