洒落怖
おにいさん

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その申し出に大鬼も気を良くし、戸板の上に横になって運んでもらう事にした。
そしてそのまま大きな寝息を立てて眠ってしまった。

ふと、鬼は眼を覚ましたが体が動かない。
見ると体が鎖でグルグル巻きにされ、腕を動かすことすらままならない。

騙されたと気づき子鬼を呼ぶが返事が無い。

大鬼の体は戸板に乗せられていたが、少しずつ動いている。
山を登っているようだった。

動かない体を無理して戸板の下を覗き込むと、大鬼の体を持ち上げているのは4匹の子鬼だった。
その4匹全てが大怪我を負っている。

47 おにいさん9 sage 2011/12/16(金) 17:53:04.66 ID:s+XHJkPg0
大鬼の寝ている間に村民にやられたのであろう、片手をなくしている子鬼もいれば足がもげ掛かっている子鬼もいた。
4匹に共通しているのは4匹とも両目を潰されていると言う事だった。

その子鬼が大鬼の乗った戸板を担いでいるのである。
子鬼を村民の1人が

「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」

と手を叩いて導いてる。
周りには人、人、人。

その全ての人の手にはそれぞれ鍬や鋤、竹で作った鎗などがあり、一番近くにいる村民は、たまに子鬼を後ろから手に持った得物で叩いて喜んでいる。
それが山を登っていく。

子鬼が倒れそうになると村民が得物で叩き、起こし、また担がせて歩かせる。

そのうち一匹の子鬼が歩けなくなった。
足がもげ掛かっていた子鬼だ。
村民は容赦なく得物で打ち据え、殺してしまった。

その死体を戸板の上にいる大鬼に乗せると大鬼は大きな声で吼えたという。
それでも村民は気にしない様子で山を登らせる。

少し進んだところでまた子鬼が一匹殺された。

子鬼2匹では戸板を担ぐ事が出来なかったので村民の若い奴が手伝ってやった。
数時間かけて山頂に上ったところで残りの子鬼2匹が殺された。

それを見た大鬼は怒り狂った声を上げたが村民は黙々と薪を拾っている。
大鬼の上に死んだ子鬼の死体を重ね、その上に薪を山のように積み上げて火をつけた。

48 おにいさん10 sage 2011/12/16(金) 17:53:32.37 ID:s+XHJkPg0

大鬼は死ぬまで吼え続け、完全に息絶えるまで数時間かかったという。
その間村民は宴を開いていたとか。

そんな事があり、鬼退治をした村として後世の村人に伝えるため、毎年その時期になるとお祭りをする事にしたらしい。

鬼役が4人ほど(ほとんどは子供)で重い神輿を担ぎ、それを村民全員でからかいながら練り歩くというもので、昔は「鬼祭り」と呼ばれていたらしい。

しかし、村内で鬼役をするのを嫌がる村民が増えたため、たまたまその時期に来た旅人とかに無理矢理させることにしたらしい。
鬼退治のときと同じように、最初はもてなしておいて、祭りがあるといって参加させ、無理矢理神輿を担がせる・・・

近年は「鬼祭り」を「鬼さん祭り」と改めてはいるが余所者が行くと必ず神輿を担がされてひどい目に合うので、知ってる人はこの時期は誰も近づかないようにしてるという。

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