洒落怖
おにいさん

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みんな口々に「頑張れ」とか「もう少し」とか応援している。

その応援を支えに歩こうと数歩行った所で、今までにはないくらい激しい「ドン」がきた。

思わず神輿から手を離してしまい、地面に手を突く。
神輿が落ちると思い上を見上げると傍まで寄った大人たちが落ちないように支えててくれたようで神輿は宙に浮かんでいる。
別の大人の手が俺を起こし神輿のところに立たせると、神輿を支えていてくれた手が無くなり神輿が両肩に食い込む。
後ろを見る余裕もないが耳には「遅いからさぁ、ぶつかっちゃうんだよねぇ」という声が聞こえてくる。
一瞬ムカついたが今は早くこの神輿を下ろしたい一心だったのでまた歩き始めようとしたその瞬間を狙って「ドン」とやられた。
同じようにつんのめり、両手が地面に付きそうになったところで大人の手に支えられる。

神輿も宙に浮いている。
また起こされて神輿を担ぐ。

またすぐに「ドン」
また転びそうになると大人の手が支え…
また神輿を担ぐ…
明らかに異常だ。
周りの声も「頑張れ」とかいう応援じゃなく「早く立て」とか「早く歩け」などの怒声に変わってきている。
半分泣きそうになりながら神輿を担ぐ3人。

44 おにいさん6 sage 2011/12/16(金) 17:50:51.78 ID:s+XHJkPg0
周りの大人の中には竹を縱に裂いた竹刀のようなものでケツのあたりを叩いてくる人までいる。
もう嫌だと思って逃げようとしても周りの大人によって引き摺られて戻される。

おかしい。
何かおかしい。
そう思い、ふと近くにいた大人の顔を見てびっくりした。
すでに笑顔ではなかった。
まるで敵を見るかのような目で俺たち3人を睨みつけていた。
周りの他の大人たちも同じだった。
皆が皆すごい形相で睨んでいる。

子供心にこれはまずいと思い、何とか逃げ出そうと考えるが、それを見越したように後ろから「ドン」とやられてまた転んでしまった。
荒々しい手に立たされ、無理矢理神輿を担がされる。

そのわずかな間で周りを見渡すと俺たち3人の神輿の周りに大人が群がっている。
進行方向の右手にいつもひな壇があるので大人は少なめだ。
大人のほとんどは左手と正面に集まっている。
真後ろには大きな神輿が迫っている。

神輿を担がされる前にYとNの顔を見た。
眼が合った。
軽く頷くと神輿を担がされて大人たちの手が無くなった瞬間に右側に神輿をわざと倒した。

よろけて倒れたと思った大人が手を出して神輿を支えようとする。
俺たち三人はその隙を見てひな壇の方に駆け出した。

後ろからは大人の声で「捕まえろ」という叫び声が上がっていたが、その頃には一心不乱に笛や太鼓の音を鳴らす大人の脇をすり抜けていた。
闇雲に走って川沿いの道まで来るとそのままの勢いで下流に向かって走り出した。
どのくらい走ったか判らないが、息が切れるまで走り続けて、もう走れないところまで走ったところで後ろを振り返ると、懐中電灯の光らしきものが10個以上見える。
その光景に寒気を感じて3人で無理矢理走り出した。

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