ストーカー・きちがいの話
危険な好奇心

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微かに見える何者かの懐中電灯の明かりと草を書き分ける音を頼りに、俺達は慎重に慎重に後を着けだした。

809 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 04:57:38 ID:moTdWLP+O

その何者かは、その後20分程、山を登り続けて立ち止まった。

俺達はその後方30㍍程の所に居たので、そいつの性別はもちろん、様子等は全くわからない。
かすかな人影を捕らえる程度。
ソイツは立ち止まってから背中に背負っていた荷物を下ろし、何かゴソゴソしていた。
『アイツ一人で何してるんだろ?クワガタでも獲りに来たんかなぁ・』と俺は言った。
『もっと近づこうぜ!』と慎が言う。
俺達は枯れ葉や枝を踏まぬよう、擦り足で、身を屈ませながら、 ゆーっくりと近づいた。

810 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 05:19:30 ID:moTdWLP+O

俺達はニヤニヤしながら近づいていった。頭の中で、その何者かにどんな悪戯をしてやろうかと考えていた。
その時、
『コン!』
甲高い音が鳴り響いた。
心臓が止まるかと。

『コン!』
また鳴った。一瞬何が起きたか解らず、淳と慎の方を振り返った。
すると淳が指をさし、
『アイツや!アイツ、なんかしとる!』と。

俺はその何者かの様子を見た。
『コン!コン!コン!』
何かを木に打ち付けていた。いや、手元は見えなかったが、それが【呪いの儀式】というのはすぐにわかった。と 言うのも、この山は昔から【藁人形】に纏わる話がある。あくまで都市伝説的な噂だと、その時までは思っていたが。

俺は恐くなり、『逃げよ。』と言ったが、
慎が
『あれ、やっとるの女や。よー見てみ。』と小声で言い出し、淳が
『どんな顔か見たいやろ?もっと近くで見たいやろ?』と悪ノリしだし、慎と淳はドンドンと先に進み出した。
俺はイヤだったが、ヘタレ扱いされるのも嫌なんで渋々二人の後を追った。

その女との距離が縮まるたびに『コン!コン!』以外に聞こえてくる音があった。
いや、音と言うか、
女はお経?のような事を呟いていた。

814 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 05:34:10 ID:moTdWLP+O

少し迂回して、俺達はその女の斜め後方8㍍程の木の陰に身を隠した。
その女は肩に少し掛かるぐらいの髪の長さで、痩せ型、足元に背負って来たリュックと電灯を置き、写真?のような物に次々と釘を打ち込んでいた。すでに6~7本打ち込まれていた。

その時、
『ワン!』
俺達はドキッとして振り返った、そこにはハッピーとタッチが尻尾を振ってハァハァいいながら「なにしてるの?」と言わんような顔で居た。
次の瞬間、慎が
『わ゛ぁー!!』と変な大声を出しながら走り出した。
振り返ると、鬼の形相をした女が片手に金づちを持ち、『ア゛ーッ!!』みたいな奇声を上げ、こちらに走って来ていた。

819 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 05:49:00 ID:moTdWLP+O

俺と淳もすぐさま立ち上がり慎の後を追い走った。
が、俺の左肩を後ろから鷲づかみされ、すごい力で後ろに引っ張られ、俺は転んだ。
仰向きに転がった俺の胸に『ドスっ』と衝撃が走り、俺はゲロを吐きかけた。何が起きたか一瞬解らなかったが、転んだ俺の胸に女が足で踏み付け、俺は下から女を見上げる形になっていた。
女は歯を食いしばり、見せ付けるように歯軋りをしながら『ンッ~ッ』と何とも形容しがたい声を出しながら、俺の胸を踏んでいる足を左右にグリグリと動かした。
痛みは無かった。もう恐怖で痛みは感じなかった。女は小刻みに震えているのが解った。恐らく興奮の絶頂なんだろう。
俺は女から目が離せなかった。離した瞬間、頭を金づちで殴られると思った。

826 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 06:10:53 ID:moTdWLP+O

そんな状況でも、いや、そんな状況だったからだろうか、女の顔はハッキリと覚えている。
年齢は40ぐらいだろうか、少し痩せた顔立ち、目を剥き、少し受け口気味に歯を食いしばり、小刻みに震えながら俺を見下す。
俺にとってはその状況が10分?20分?全く覚えてない。
女が俺の事を踏み付けながら、背を曲げ、顔を少しずつ近づけて来た、その時、タッチが女の背中に乗り掛かった。
女は一瞬焦り、俺を押さえていた足を踏み外し、よろめいた。
そこにハッピーも走って来て、女にジャレついた。
恐らく、2匹は俺達が普段遊んでいるから人間に警戒心が無いのだろう。
俺はそのすきに慌てて起きて走りだした。
『早く!早く!』と離れたところから慎と淳がこちらを懐中電灯で照らしていた。
俺は明かりに向かい走った。
『ドスっ』
後ろで鈍い音がした。
俺には振り返る余裕も無く走り続けた。

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