洒落怖
宝探し

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「イチニのサンで、この布を引っ張ろう」

と亮が言った。

「うん。僕こっち端持つから、亮ちゃんそっち持って」

僕は逃げ出す準備をしていた。
その下に何があるか、大体予想はついていた。

「イチニのサン。」

その瞬間、力一杯布を引くのと同時に、目を堅くつぶり顔を背けた。
亮の悲鳴が聞こえた。
僕は目をつぶったまま、ドアまで駆けていた。

パニックになった亮がわぁわぁと叫ぶ。
ふと、その叫び声が止まる。
次の瞬間・・・

「宝だ!!宝を見つけたぞっ!!」

しまった!!
臆病な所を見せたばっかりに、亮に先にお宝を見つけられてしまった。
僕は勇気を振り絞ると、ベッドへと目を向けた。
想像した通り、ベッドの上には死体が転がっていた。
しかし、思ったより大した事はなかったんだ。
前に何かの本でみた、ミイラみたいだった。
それはどうやら僕等と同じ年くらいの子供の様だった。
その首にはきらきらと金色に輝き、目の部分に、真っ赤な宝石が埋め込まれた鷲の形のペンダントがかかっていた。

「た、たっくん。あのペンダント取ってよ」

亮が震えた声で言った。
亮はこう言うのが苦手だからなぁ。
でも、僕だってそんなの嫌だよ。

「亮ちゃんが見つけたんだろ?亮ちゃん取れよ」

「ふ、二人で協力しなきゃ駄目なんだよ」

確か、二人で協力しないと宝は取れないって話だったな。
でも、これなら別に一人で取っても取れるじゃないか。
よぉし、それなら僕が取って、僕の物にすればいいんだ。

僕はおもむろに手を伸ばし、鷲のペンダントを掴んだ。
弾みで死体の少年がこちらを向いた。
心臓が口から飛び出しそうになった。
でも、震える手で掴んだ宝は決して離さなかった。
慎重に、慎重に、死体に触れないようにそれをはぎ取った。

「やった!!やったぞ!!お宝ゲットだぜっ!!」

手にした途端、さっきの怖さなんて吹き飛んで嬉しさ一杯になった。
高々とペンダントを掲げ、跳ね回った。
まるで、僕一人しか居ないかの様に、有頂天になってしまった。
そんな僕を見て、亮が怒りを顕わにした。

「俺が最初に見つけたんだ、俺によこせっ!!」

「そんなのおかしいよ!!実際取ったのは僕じゃないかっ!!」

僕は亮の理不尽な言い分に心底頭にきたんだ。
だってそうでしょ?
アイツは口先ばっかりでなんにもしなかったんだ。
びびって何にも出来なかったくせに、美味しいとこだけ持っていくつもりなんだ。

「実際取ったからってなんだよ・・・大体ここ行こうって言ったのも俺だぞ」

普段大人しい僕が、怒鳴ったりしたもんで亮はビックリした様子だった。
でも、腕っ節に自信がある亮は、僕相手には引こうとしなかった。
あんなに怖がっていたくせにだ。

「よこせよっ!!」

亮は僕の手に握られたペンダントをむしり取ろうと力一杯引っ張った。
嫌だと口では言わずに、僕も精一杯力を入れた。
その時亮の左手が弧を描いた。
光の筋がパッと描かれたと思うと僕の腕から力が抜けていた。
次の瞬間、鋭い痛みが襲ってきた。
亮は隠し持っていたカッターナイフで僕の腕を斬りつけたんだ。

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