この怖い話は約 3 分で読めます。
どう考えても、鷲と蛙じゃ釣り合いがとれそうもない。
亮もそれは判っている様だった。
鷲はちゃっかり自分の物にして、僕には蛙でお茶を濁そうって事か。
「うん・・・でも・・・」
でも、あんな蛙なんかいらない。
全然ピカピカじゃないし、目だって赤い宝石じゃないし、それに蛙だ。
僕は鷲が欲しいんだ。
「そ、そっか、あれを取るのは骨が折れそうだもんね」
亮はあからさまに話を逸らそうとしてる。
蛙がかかっている壁には、下から梯子がかかっている。
穴は大きくて、どう考えても、底におりない限りは梯子に手は掛からない様だ。
しかし、ご丁寧に穴の手前に太いロープが置いてあった。
これで穴の底におりて、あちらの梯子を登れって事だろう。
「これは・・・協力しないと取れないよね」
亮が不安げに僕の顔を見る。
「そうだね」
その時の僕はきっと無表情だったろうな。
協力?
さっき僕に斬りつけたばっかりなのに?
「僕がロープをこっちで引っ張るから、たっくん取ってきなよ」
絶対そう言うと思ったね。
自分で降りるとは、絶対言わないと思っていた。
何時も嫌な事は僕にやらせようとするんだよな。
「うん、わかったよ・・・しっかり持っててよ、亮ちゃん」
僕はそう言うと亮の顔を正面から見据えた。
「もちろんさ!!たっくんがお宝手にする番だもん」
亮がにっこりと笑った。
「ねぇ・・・お守りの代わりに、僕に鷲のペンダント貸してよ」
「え・・・い、いいけど・・・蛙取ったらちゃんと返してね?」
僕は鷲のペンダントを首にかけた。
それだけで勇気がわいてきて、何でも出来るように思えた。
簡単だと思った。
亮の背中を押せばそれでお終いだ。
「うわぁ、高ぇ・・・下が全然見えないよ。ホラ、たっくんも・・・」
亮がこっちを振り返ろうとした時、足を滑らせた。
そう、滑らせたんだ。
僕は何もしていない。
ちょっとぶつかったかもしれないけど、わざとじゃない。
ちょっと、脅かしてやろうと思っただけだ。
亮がカッターナイフで僕を傷つけたように。
鈍い音が穴のそこで響いた。
亮の声は聞こえては来なかった。
兎に角、早くここは離れてしまいたい。
ここを出て、早く何もかも忘れてしまいたい。
でも、このペンダントを見て、思い出さないでいられるだろうか?
暗い気持ちを見透かした様に、鷲の目が僕を見ていた。
そんな訳ないのに、ペンダントが僕を見る訳なんてないのに。
僕は恐ろしい想像が膨らまないようにと、息が切れる程思い切り走った。
出口へ。
『早く出口へ行かなきゃ。』
『出口だ!!』
必死に走り、途中で何度も転んだけど、奥へと辿り着く時間の半分もかからずに出口までやって来れた。
『やっと出られる。』
僕は手をかけ、力一杯そのドアを開こうとした。
その時の僕の目は血走っていたと思う。
だけど、どんなに力を込めてもそのドアが開くことは無かった。
どうやら閉じこめられてしまったらしい。