洒落怖
出られない少女

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夏が近くなると思い出すことがある。

中学生の時、ある夏の日のことだ。
俺は不思議な体験をした。

夏休みを迎えて、同世代の多くは友達と遊んだり宿題をやったりしていただろう。
俺はというと、サッカー部の試合や練習で、頻繁に色んな場所へ遠征していた。

サッカーのほうは、お世辞にも上手いとは言えず、多忙な練習にやる気も薄れかけていた。
そんなおり、俺が住むC県の中心部より2時間ほど離れた中学校に遠征することになった。

当日は快晴。
空模様とは裏腹に、俺の気持ちは長い移動時間と逃げ出したいような気分で曇っていた。

しかし、そこはどこか懐かしい田舎町で、
美しい自然と田んぼ、そして照りつける太陽とセミの声が暑いながらも、俺を癒していた。

501 本当にあった怖い名無し New! 2010/04/23(金) 23:45:09 ID:fGrFFTZr0
いつも通り試合を終え、いくつかのグループに別れて帰宅しようとしていた。

そこで、俺は顧問の先生に呼び出された。
試合内容の不甲斐なさと練習態度が悪いと怒られた。
俺はこの顧問に嫌われていたので、いつものように俺以外のメンバーにお咎めはなかった。

10分ほど聞き流して帰ろうとすると、他の人はすでに帰ってしまったようだった。

俺はすっきりしない気持ちで荷物を担いだ。

見知らぬ町で、考え事をしながら歩いていた。

気付いた時には、来た時には通らなかった場所にいた。迷ってしまったのだ。

人は見かけず、家に訪ねるのも気が進まなかった。
少し引き返すと、赤い鳥居が見えた。

先ほどは考え事をしていて気付かなかったが、小さな傾斜を伝うようにして階段があり、そこには鳥居がかかっている。
ここは神社であろう。

俺はこの神社に人がいるような気がして、鳥居をくぐり階段を昇っていった。

502 本当にあった怖い名無し New! 2010/04/23(金) 23:46:04 ID:fGrFFTZr0
管理の行き届いたとは言い難い境内の真ん中に、古びた本堂があるだけだった。

その本堂に前に、人が立っているのがみえた。

セーラー服に、お下げが二つ。
神社という場に似つかわしいのか、そうでないのかよくわからない風貌の少女の後ろ姿。

少なくとも時代錯誤な格好ではあったが、田舎町ということで大きな違和感はなかった。

俺は駅までの道を聞くことにした。

「あの…すみません。道に迷ってしまったんですが、駅はどっちですか?」

少女は驚いたように振り返った。

503 本当にあった怖い名無し New! 2010/04/23(金) 23:47:19 ID:fGrFFTZr0
夏なのに肌は白く、大きな瞳で、綺麗な顔立ちをしていた。
そして、彼女はか細い声でこう言った。

「駅の場所は…忘れました。」

町の人間が、駅の場所を知らないことがあるだろうか。

「この町の方ですよね?誰かわかる方いませんか?」

彼女は少し考えるようにして言った。
「みんなわかると思いますけど…私はここから出られないので。」

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  • 匿名 より:

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