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509 本当にあった怖い名無し sage New! 2010/04/24(土) 00:05:53 ID:fGrFFTZr0
しかしすぐに、彼女は霊体であることを思い出した。俺の身体で、何をしようというのか。
「あなたの身体を借りれば、ここから出られるかもしれない。」
借りる?憑依しようというのだろうか。
「それで…俺は無事なのかな?試したことは?」
「ありません。でも、私を見ることができたのはあなたが初めてです。
あなたになら憑依できるような気がするんです。」
彼女の表情は深刻であった。
今までこの場所に閉じ込められ、活路を見いだせず死してなお辛かったのだろう。
俺は疑問をぶつけた。
「それで、外に出られたら復讐するつもりかい?俺の姿で人殺しは困るんだけど…」
「いえ、あの男の前で一言私の名前を出せればいいんです。私を忘れさせないために。
できれば…そこも協力してほしいです。」
俺は覚悟を決めた。
「わかった。いいよ、憑依しても。でも、もし何かあったらお祓いしてもらうからね。」
彼女は、ほっとした表情を見せた。
「本当にありがとうございます。あなたに出会えて本当によかった…」
本当は怖かった。自分が自分でなくなるかもしれない。最悪、死んでしまうかもしれない。恐怖を振り払うように、強く言った。
「さぁ、いつでも来てくれ!」
510 本当にあった怖い名無し sage New! 2010/04/24(土) 00:08:48 ID:adgRU6fV0
「…行きますね。」
彼女が近づいてくる。
俺に抱きつくような格好になる。恐怖で、ドキドキする暇もなかった。
強い風が吹いたような感覚の中、一瞬で彼女が俺に入ってきた。
目の前が白く曇る。一瞬、意識が飛びかけた。
(やりました!入れましたよ!大丈夫ですか?)
頭の中に響く声は彼女のものだ。
「…うん、大丈夫そう…かな。」
少し頭がふらふらするのと、軽い吐き気がしていた。
(あとは、ここから出られるかですね。)
彼女は、少し興奮気味だった。
「行ってみよう。」
身体に鞭を打って、階段を降りて行く。彼女が亡くなった場所。彼女の未来が潰えた場所。
顔は見えないし嗚咽も聞こえないけど、彼女はきっと泣いていただろう。
目の前には古びた赤い鳥居。足を踏み出す。
その時、身体に電気が流れるような感覚が走った。痛くはない。ただ、前に進めなくなった。
でも、彼女も俺も諦めなかった。
(私にはやることがあるの…!)
「頼むよ神様、彼女の思いをくんでくれ!」
なぜここまで彼女を想っているのか、自分でもわからなかった。
憑依すると、感情まで共有してしまうのだろうか?
511 本当にあった怖い名無し sage New! 2010/04/24(土) 00:11:20 ID:adgRU6fV0
気が付くと鳥居の外にいた。
人はいなかった。来たときと同じように、セミの声だけが聞こえてくる。
ベタ過ぎ