洒落怖
裁き

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この“目撃者”と“十分な動機”という2つの条件が付随してまわる以上、
必ず捜査線上に俺の名前があがる。それだけは疑いようのない事実なのだ。

824 787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:10:43.89 ID:U8CDXpqm0
「完璧、詰んだか…」

一気にからだの体温が下がる。悪寒と言ってもいい。どうする、いますぐ逃亡するか!? いや、違う。
ここで俺が行方不明になったりしたら、それこそ「私が犯人です」と警察に教えているようなものじゃないか。
逃げようがないんだ、これ以上は。大人しく観念しよう。逃げたところで私の罪が消え去るわけでもないのだ。
私は深く溜息をつくとジッと天井を見上げた。

「さて、何年になるのかな。獄中生活は。
 そうだな…せっかくだ、最後にシャバの空気でも吸っておこう、今日は晴れだ」

826 787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:19:01.17 ID:U8CDXpqm0
外は日差しが眩しい。そういや太陽の光ってこんなに暖かかったんだな。不思議と新鮮に感じられる。
色づいた新緑がこんなにも青々しく、そして清々しく香っていただなんて、いままで気付きもしなかった。
柄にもなく街中の喧騒を噛み締めていると、交差点の先に黒服の男性が不自然にこちらを伺っているのが見えた。
来たか、思ったよりも早かったな。交差点を渡りきったところで男性3人に取り囲まれる。

「よろしいですか?」
「はい」

私ははっきりと頷いた。警察の身分を確認するまでもない。これが俺の人生の終着点だ。

「では、私に付いてきてください」

827 787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:24:41.01 ID:U8CDXpqm0
男に案内されたのは、街中の一角にある窓のない小さな建物。警察署ではない。交番でもない。どこだここは。
案内されるままに室内に入ると、それが霊安室であると気づくのにそれほど時間は掛からなかった。
暗がりの部屋にある一台のベッド。それを天井の照明ひとつで照らしている。ベッドの上には死体がひとつ。
顔に白い布が被せられているが、身長や髪の長さからそれが例の少女であることに疑いの余地はなかった。

ベッドの傍らには監察医とおぼしき白衣の男性が佇んでいる。私はすっかり気が動転し思わず叫んだ。

「こんなことをしてどうなる!ああ そうとも、これは間違いなく私が殺した少女だ。それは認める。
 だが、そんなことは俺を警察署に連れていってくれればいくらでも供述してやれる。逮捕するに十分なほどにな。
 それに、死体の本人確認が必要ならば、鑑識に撮らせた顔写真を供述材料に使えば済む話じゃないか。
 それをこんな…こんな風に、俺に少女の生の遺体を見せつけていったい何が目的なんだ!!」

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