洒落怖
裁き

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「いいか、これは正当な裁きだ。あの日、お前は無実の人間を殺した。その命をもって罪を償え!!」

私は銃を少女の頭部めがけて発砲した。少女が乗った自転車は前のめりに転倒、路面に放り出される少女。
自転車から降りて恐る恐る近づいてみる。ジワジワと、しかし確実に地面を血が濡らしている。

「やった、やったぞ。ついに裁きを下してやった」

間違いない。私は少女の絶命を確信した。

794 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:11:04.60 ID:U8CDXpqm0
二度と動くことのない その女の身体をゆっくりと視姦しながら、
しだいに冷静さを取り戻した私は、自分が冒した事の重大さに気づく。

そういえばここは警察の作戦現場から遠く離れた管轄外の場所…
そこに本作戦における最重要指名手配犯の一人である少女の死体が転がっている。しかも射殺体として。

警察があれほど慎重になって一人の怪我人も出さないよう作戦を練っていたのにも関わらず、
一瞬にしてその苦労を無為にしてしまったのだ。…いったい誰が!?

誰って… …俺だ…俺しかいない。いや、違う。これは正当防衛だ。
撃たなければ俺が殺られていた。そうに違いない。
しかし、この手元にある銃、これはどうなる!?日本では違法だぞ。
銃を撃ったのは…やっぱり俺だ。つまり、これは俺の責任問題!?

795 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:12:50.59 ID:U8CDXpqm0
「ち…違う…これは俺じゃない。俺がやったんじゃない。そうだ、これは警察だ。警察の失態なんだ。
 警察が少女を逃したりしなければこんな結果にはならなかったんだ。ハハッ…俺は無関係だ。
 そもそも俺は現場に居なかったぞ!そうさ、俺には完璧なアリバイがある。俺はずっと家で謹慎してたんだ」

慌てて銃から指紋を拭き取ると、私は現場を後にした。

帰宅し布団の中にうずくまると今日あった出来事を冷静に振り返る。

「考えても見ろ。そもそも警察が一斉検挙を行なったのは俺の情報提供に基づいてじゃないか。
 加えて、指名手配犯が死んだのは俺が射殺したからだ。 あぁ…なんてことだ、すべて俺の責任だ…」

796 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:16:02.06 ID:U8CDXpqm0
自分が犯した罪の重みに耐え切れなくなった私は、その日はずっと身震いが止まらず寝付けない夜を過ごした。

「ククッ…何が正義だ。俺なんて威勢がいいのは最初だけで
 ヤバくなったら平気で責任逃れをする最低の野郎じゃねーか…ちくしょう…」

そうなのだ。少女殺害現場が誰にも目撃されていない以上、
このままいくと、今回の件は確実に警察の不手際ということで落ち着いてしまうのだ。
私がこのまま墓場まで事件の真相を黙秘し続けさえすれば、すべては警察の不手際になる。
我ながら自分の薄情さ加減に呆れ果てた。散々っぱら公権力に頼っておきながらバツが悪くなったら知らないふり。
窮地に追いやられてはじめてわかる、人間としての器。その資質。己の本性。
最低の人間だ。俺は最低の人間だ。人間失格という言葉が重く頭にのしかかる。

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