オカルト版まとめ
ホテル・旅館にまつわる怖い話

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隣の男湯からは幼稚園児くらいの子供とお父さんの賑やかな声が聞こえてくる。
私は一番奥の、全面ガラス張りになっている窓に近い浴槽に入った。
ひとりきりなので、泳ぐまねをしたりして寛いでいた。
気がつくと男湯からも人の気配が消え、大きな大浴場に私ひとりになって
しまったようだった。
まだ夜の7時くらいだというのに、お客は結構いたはずなのにこんな広くて
気持ちいいお風呂に誰も来ないなんて…と不思議な気分だった。

しばらくぼーっとしていた。
見るとはなしに、ガラス窓を見ていた。
外はもう真っ暗なので(外灯は一箇所くらい)ガラスが鏡のようになり
室内を写している。
私は窓に向かって、正面を向いて湯船の縁に寄りかかっている。
自分の姿が正面に見える形となる。

あれ?なんかおかしい。
いつの間にか、ガラスに映る私の少し横に誰か別の人の姿が映っていた。
後ろを振り返ったけれど誰もいない。
おいおい、何よ~と思いつつ、私は目が悪いので(0.04くらい。メガネは外してる)
目を細めながら窓に近づいた。
外が真っ暗なので、窓に顔をつけないと外の様子が見えない。
どうやら風呂のすぐ前は植え込みになっているらしい。
そして、その植え込みの向こうに大きな岩があって、その上に女性がこちらに背を向けて座っていた。

右手を岩について、顔をややそちらに傾けた横座りのような感じ。
長い髪の毛をアップにした若い(と言っても30そこそこくらい)適度に肉付きのある後姿だった。

「きれいな人だなぁ。芸者さんかなぁ」

そんな風に思って、見とれていた。
しばらく見ていたけれど「うわっ、これはやばい?」急に寒気がした。
考えたら外は真冬と言っていいくらい冷え込んでいる。
なのに、その女性は同じ姿勢のまま、何分も微動だにしないのだ。
それに目の悪い私が、その女性の姿だけはやけにはっきり見えている。
私は急いでお風呂から上がって、部屋に帰った。

次の朝、もう一度大浴場へ行ってみた。窓の外には、植え込みがあった。
が、夕べはっきり見えたはずの大きな岩がない。
立ち上がって背伸びしたりしてみたけれど、やっぱり何もない。
夕べは浴槽につかったままの状態で幅1メートルくらいある岩のどっしり
した形が見えていたのに…。
結局、檜風呂の正面に露天風呂があったのかどうかも判らなかった。

ひとりきりで見たので、急に怖くなってしまったけれど、あの女性の姿は
寂しそうな感じはしたけれど、決して悪い感じは受けなかった。
きれいな人だったなぁ(顔は見てないけど)と今でも思います。以上です。

293 名前:本当にあった怖い名無し:2011/05/28(土) 16:01:07.91 ID:tvXuzQRw0
冗長な心理描写や下手な小説的手法を用いる人ばかりでうんざりだけどコレはいい。
やはり体験談は起こった事を淡々と語るのがいいですよ。

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