洒落怖
奈落

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786 本当にあった怖い名無し sage 2009/09/11(金) 05:12:58 ID:tvTQWeUP0

外にでたオレは先輩方にこっぴどく怒られた。
劇中に奈落を走ることにより、その音がうるさくて鑑賞者がいた場合気を散らせてしまうからだ。
「すみませんでした。」
一言謝った。だが、オレはそれどころではなかった。
今の声はいったいなんだったのだろうか・・・
その出来事を誰にもいわないままオレは家に帰った。

まだあの時の声が耳から離れない。
嫌なことは忘れて寝よう。そう思って布団の中にはいって寝た。

その夜オレは夢を見た。
一人で学校を歩き回り、最後にいつも練習している建物へと歩いていく。
階段をあがり奈落の前の扉に手をかける。

そこでオレは起きた。
それから7日間オレはその夢を毎日見続けた。
必ず同じ場所で目覚める。

いつのまにかオレは部活にでてあの場所にいくことを嫌がっていた。
練習の時も極力奈落への道には近づかないように。

しかし、本番の前日にリハーサルを行うことになった。
奈落を通らなければいけない日が、やってきた。

788 本当にあった怖い名無し sage 2009/09/11(金) 05:20:42 ID:tvTQWeUP0

「どうしても通らないといけませんか?」
オレは先輩方に話した。
だが、オレ一人のわがままが通じるわけもなく結局通ることになった。
劇は始まる。
オレは時間がたつのが怖くなってきた。
あの日の出来事と、毎夜みる夢。
次にあの扉を開けてしまったら今度は・・・

気づくと劇も終盤だ。
ずっと俯いていたオレにK先輩が話しかけた。
「おい、そろそろ行かないとまずいぞ。」
「・・・はい」
オレは重い腰を上げて階段を下がっていった。
階段を下りたところでN先輩とすれちがった。
「顔色悪いけど、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
「ならいいけど、あとちょっとだからね」
そういうとN先輩は階段をあがっていく。
オレは最初の部屋の扉を開けた。

789 本当にあった怖い名無し sage 2009/09/11(金) 05:26:10 ID:tvTQWeUP0

部屋にはいると奈落の扉がみえる。
早く行かないとオレの出番がきてしまう。
オレは意を決して扉に手をかけようとした。
その時だった。

カチャカチャ・・・

オレの握ろうとしたドアノブが回った。
誰もいないはずの奈落側から誰かがドアノブをひねっている。
オレはとっさに後ろに下がった。

するとドアノブはまるで手を離したように最初の位置へ回転して戻る。
オレは扉に釘付けになった。
誰かいるのか・・・?
「誰かいるんですか?」
震えるような声でオレは問いかけた。
返事はない。
嫌な静寂が続く。

「・・・ねぇ」

女の人の声が、扉の向こうから聞こえた。

790 本当にあった怖い名無し sage 2009/09/11(金) 05:42:28 ID:tvTQWeUP0

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