洒落怖
青い箱

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 ある日、私は部屋でいつものように遊んでいた。
そしてふと、何気なく宝箱を取り出してきた。つまり、ガラクタ入れである。
 小石の詰まったビン、貝殻のふくろ、星模様のついたコルク、
思い出がつまっているのだかつまっていないのだかわからない内容の中、
あの時拾った青い箱を手にとった。
 ?
 手のひらサイズの長方形の箱、中にはクッション。
この宝箱に入れる際は、ちゃんと、土をおとした筈だった。
青い箱の外側は、土ひとつついていない。が、クッションの上に、ふと赤茶のよごれができているのである。
 それは微かなヨゴレであったが、妙に生々しい色が印象的だった。
何が生生しいかは説明できないが、
そう、それはそこらの貝殻の土がついたものではなく、まるで、そのクッションに何か置いたような跡。
 はじめて罪悪感の他に芽生えた、気味の悪さ。
私はそれ以上その箱に触れたくはなかった。虫でもいたのかもしれない。
その青い箱は、部屋の隅に投げ出されたままにされた。

275 本当にあった怖い名無し New! 2011/04/06(水) 23:24:47.06 ID:C0RJjG3V0
 夜が来た。私は習慣でふとんを被る。
長い間あの音に苛まれている気がするが、実は実際あの音を聞いたのは数回なのかもしれない。
しかし、聞こえることに変わりは無く、夜が昼とは比べ物にならないほど長かったのだ。
 私はいつかあの音がぴたりと止むことを望みながら、
心の奥底では静かに実はあの音を待っていたのかもしれない。
しかし、奇怪な音の正体を暴くには、あまりに私の心は震えていた。
 布団の暗闇の底に立てこもり、息を殺し、僕はいない、僕はいないと存在を消す。
そして、

ざり

 それはいつものように、どこからともなくやってきた。
しかしいつもと違ったのは自分の方で、その音が不意に耳に響いた瞬間、私は小さく反応をしてしまったのだ。
布団が私の身にあわせて擦りあう音は、ざり、ざりという怪音よりよっぽど身に響いた。
子供部屋に、響いた。

276 本当にあった怖い名無し New! 2011/04/06(水) 23:25:12.10 ID:C0RJjG3V0
這う音は、ぴたりと止まった。

 気づかれてしまったのだ。
この些細な失敗にすっかりとりつかれた私は、涙でも流していたのだろうか。
それでも必死に取り繕おうと息を懸命に殺し、そして耳に神経をあつめた。
 だが、それ以降、時計が神妙に刻む針の音以外に子供部屋に響く音はなく、
私は序々に平常心と安堵を取り戻す。
 驚いたのか、帰ったのか、
まさか布団をめくればそこに顔があるなんてこと・・・・まさか、まさか。
安堵の中で、「お化けなんかいるものか」というか細い安心材料にしがみつく。
やがて、その結論がじわじわと頭になじんだ頃、かいた脂汗をどうにかしたくなった。
 疑心暗鬼になっていても仕方なし、とりあえず、布団の外の空気が吸いたい。
そうして、思い切って布団を取り払った。
 ・・・・目の前には、ただいつもの天井、いつもの壁、何にもありゃしなかった。
まだ夜の最中だというのに、長い長い夜が明けた気になったと共に、
少しばかりのやってやった感。
そして深く息を吐き出たのだった。だが。

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