洒落怖
M君の生活

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902 1かたり ◆Ac.S.KQ6gg New! 2008/05/23(金) 03:45:25 ID:ZOtcgECe0
去年成人になり、先月は地元熊本に帰り成人式に行った。
成人式後の同窓会では懐かしい顔ぶれで、思わずはしゃいでしまった。
そんな中に、中学の頃は影が薄かったM君もいた。M君は髪をドレッドヘアに編んであり、同窓会のメンバーの中でも一番様変わりをしていた。だけど、M君は誰と話すでもなく、ポツネンとしていた。
M君とは、一度どうでも良い事で言い争いになった事がある。
霊はいるのか、いないのか。
M君には霊感があるらしく、中学の時から「霊はいるんだって」と口癖のように言っていた。
自分はその頃霊を信じていなかったので、ある日M君に「霊はいないんじゃないの」と何気なく言ったら、M君は猛然と反論し、「いる」「いない」で大論争になった。
そんな言い争いが懐かしくなり、M君に声を掛けた。
中学を卒業した後、自分はちょっとした霊体験をしたので声を掛けやすかった。
最近、また霊を見た?と聞くと、見たよ、とM君はかえした。

以後はM君の体験である。

M君は工業系高校を中退した後、バイトでお金を溜め、ゲームソフトの専門学校通い始めた。
学校は福岡にあるため、実家から離れて一人暮らしを始めた。
その一人暮らし先の学生マンションで恐ろしい思いをしたという。
ある雨の日、タバコを吸おうとベランダに出たら、向かいの月極駐車場になにか白い人影が立っているのに気付いた。
傘も差さず、じっとこちら側を見ているそぶりだった。
あ、お化けだ!
直感的にそう気付き、タバコを揉み消して、部屋に戻った。
霊に危害は加えられた事はないけれど、「虫が嫌い」というような感じで霊が嫌いであった。
カーテンを閉め、祈祷師の人から教わったという魔除の祝詞を唱え続けた。
30分程唱え続けた後、もう大丈夫だろうと思い、唱えるのをやめた。
そんな時、なぜかM君に好奇心がむくりと湧いた。
怖いもの見たさ、である。
M君は大人になるにつれ、霊を見ることが少なくなってきたという。だから、霊はこれで見納めかもしれないと思ったのだ。

903 2かたり ◆Ac.S.KQ6gg New! 2008/05/23(金) 03:47:12 ID:ZOtcgECe0
カーテンの隙間から、先ほど霊らしきものが立っていたあたりを、ちら、と盗み見た。
まだ、いた。
さっきと同じように白い人影はずっとこちらの方を見つめるようにして立っていたのだ。
あ……、やべえ。M君がそう思った瞬間だった。白い人影がすーっと速いスピードでスライドするようにM君のマンション側に向かってきた!依然と顔はこちらに向けたままである。
M君は驚き、半ば叫ぶように再び祝詞を唱え続けた。
白い人影がクモのようにマンションの壁を這い登る所を想像し、ゾッと鳥肌が立った。
やばい、どっかに逃げよう。M君はそう思い、カーテンの方を見ないようにして財布を捜した。ネットカフェに逃げ込もうと考えたのだ。
だが家を出る時、不運な事にM君の視界にカーテンの所が入ってしまった。
カーテンの隙間から、白い人影が見えた……。
                  
「大変だったね」話を聞いてM君を慰めた。
だが、M君の話によると、起こった事はこれだけではないという。
                  
しばらくは恐ろしくて自宅マンションには帰れなかった。なのでM君は4日間程ネットカフェと友達の家で寝泊まりしていたが、やはり自宅には帰らなければならない。
そこで神社からお札と御守りを買ってから自宅に帰った。
マンションの部屋に入ると、部屋を出た時となんら変わりもなく、ほっとした。
M君はベランダの入り口に買ってきた御守りを置き、四隅に盛り塩をした。
それからというもの怪異は起きず、今まで通りの生活になった。
盛り塩はほったらかしになり、カチコチに固まってしまっていたという。
そして、心霊現象が起きた事などすっかり忘れたある日の事だった。
M君は飲み会で夜中の3時に帰宅した。
M君は特に変わった事をするでもなく、ふらふらしながら自転車を止め、郵便物を確かめて、エレベーターでいつも通りに我が家の玄関の扉の前に辿り着いた。
そして鍵を取り出して、玄関の鍵を開ける。
ここまでは、いつも通りであった。
M君は玄関の扉を開けた。その瞬間、なぜかM君は気を失ってしまったのである。気がつけば、朝になっていた。

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