洒落怖
秘密の場所

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その時。「ギャッギャーッ。ギャッギャーッ。」という鳴き声が耳に
入っていきた。しかし、その鳴き声はもっと前から聞こえていたかもしれない。
自分が鳥の声と思っていただけだったのかも。
腰を抜かして視線が上がり真珠選別所の桟橋の上に白いワンピースを着た女が目に入る。
「ギャッギャーッ。ギャッギャーッ。」女は両手で耳をふさぎ、あらん限りの声を発している。
なぜだかしらないがこの世のものではないことは確信していた。
こちらに背を向け短い髪を振り乱して叫んでいた。自分はどうして駆け上がったか。
腰を抜かしたまま崖を駆け上がる。
その中ほどで「ドブンッ、、、タプタプ。」と水面に何かが飛び込んだ音がした。
「オンナが海に飛び込んでこっちにくる!」そこから自分の記憶はあいまいになる。
よく事故をしなかったものだと思う。

828 本当にあった怖い名無し sage 2010/10/04(月) 21:06:48 ID:ErsFOF2o0
自宅近くの喫茶店で過ごし、少し心を落ち着ける。
家に帰ると兄は友だちとボーリングに出かけたそうだ。
のんきな兄に対する怒りがふつふつとわいてきたことを思い出す。
それから、数年たって兄は難病にかかり死んだ。父の退職金や母の蓄えを治療で食いつぶし死んだ。

死ぬ1カ月くらい前に兄にあの時の話を聞いた。
「何を見たん?」「何ってアレさ。首さ。」
「網に入ったのつったんやろ。網に入った首。」
「いや、ダンゴのバッカンフタをしとったらバッカンの中で音がする。
びっくりして腰を浮かしてそーとフタを開けると、中に首がおった。女の首。
ダンゴ喰っとった。サナギ粉まみれになってな。」
「あたまおかしくなっとるから信じやんやろ。そやけどホントのことや。」
薬のせいか、血栓のせいかときどき変なことをいうようになっていた兄は
自嘲気味に言った。「信じられへんやろ。」
「いや、俺も見たもん変なもん。」と自分が言うと、兄は真面目な顔になってこっちを見た。
この話を兄としたのが最初で最後だった。

自分は釣りをしなくなった。というか自宅より南に行くのが怖い。夜見る夢はいつもあの時のこと。何回リピートしたか。
しかし、兄の葬式が終わって、兄が震えて帰ってきたときのことを母に話すと、まったく母は覚えていなかった。
そして、あの事がホントのことか確信できなくなった。
自分では大変な勇気を振り絞ってあのじいさんに会いに行くことにした。
しかし、あの場所の前を通るのは怖いので遠まわりをして行った。
じいさんはいた。しかも自分を覚えていた。やはりあの事はあったんだ。
起こったことなんだと思うと、なんだか泣けてきた。
「あれからあそこに行きました?」と聞くとじいさんは
「あそこはあかん。変なとこやで。にいちゃんもやめとけ。」急に顔を曇らせていった。

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