洒落怖
秘密の場所

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翌日、自分には時間がなかった。仕事があったのだ。4時の暗いうちに家を出る。
兄は今日は休むらしい。6時前にガマに到着。朝の光の中獣道を下る。
久しぶりだ、自分が最後に釣りに来たのはもう何年前か。
少しコワイモンのことが気になったが、この穏やかな光の中ではそんな思いは消し飛んでしまう。
はたして釣り具一式はあった。タモは!タモも釣座の後ろに投げ出されている。
ほっとして手早く釣り具を回収しなければと考える。カラスの声でコワイモンのことが頭をかすめる。
クーラーとダンゴ材が入ったバッカンが先だ、その後スカリと竿、タモで2往復で勝負を付ける。
クーラーを持とうとした。持ち上がらない。何が入っている!

823 本当にあった怖い名無し sage 2010/10/04(月) 20:56:33 ID:ErsFOF2o0
クーラーを開ける。ものすごい臭気が鼻をつく。中には何かの魚。
たぶんいわしミンチがたぷたぷとクーラーいっぱい入っている。
何日間も放置されたような腐肉のにおいが目と鼻を襲う。
「なにやっとるんだ。」兄に対する怒りが頭の中を支配する。
しかし「これは兄がしたことなのか。何でいわしミンチ?何で腐ってる?」
と考えるが兄に対する怒りが頭の中を支配していた方が怖くない。
無意識のうちにそう考えていた。

「どうする?あきらめるか。クーラーはあきらめる。とりあえずリールと
タモワクは持って行こう。いやタモワクだけでいい。」と考え
タモワクをつかみ戻ろうとしたとき後ろのタブノキに首つり死体を発見した。
自分に背を向けている中年。ベージュのジャケット。足は地面に着いている。
しかし死んでいるのは間違いない。なぜなら恐ろしいほど首が伸びている。
釣座に行く時は、タモが気になっていたし、木の陰だったので気づかなかった。
自分はこれを見て少しほっとした。「兄のコワイモンはこれだった。ただの首つり死体。
釣りをしていて気づかずに、昼飯時にふと後ろを見て錯乱した。たぶんそんなところだろう。」
そう考えながら死体から目を離せないでいた自分は少し冷静になりそして気が重くなった。

「この忙しい時期に。今日は仕事休まなあかん。警察呼んで事情聞かれて
、解放されるのはいつのことやら。」「このまま、知らんぷりで行こうか?しかし、道具をおいて?
誰かに車を見られたかもしれない。やっかいだがしょうがない。」
なんだか死体に背を向けるのは怖くて、タモをもち振り返りながら道を上る。
「駐在があったな。」 車で1分ほどの所に集落があり、そこに駐在所がある。
しかし警察官は不在だった。ご用の方はここにメモするようにというバインダーに挟んだ紙とボールペン。
緊急の場合はここにという電話番号。またまためんどうくさくなった。

824 本当にあった怖い名無し sage 2010/10/04(月) 21:00:19 ID:ErsFOF2o0
駐在所を出ると道の向かい家で庭の手入れをする老人と目があった。
「なんか用なんか?いっつもおらんぞおまわりさんは。」と老人。
「人が死んどるの見つけたんですわ。首吊りですわ。ポンプの階段下ですわ。」
老人は、場所を伝えると確認してくるといって自転車でガマに向かった。
自分は警察に電話するようにいわれたので連絡を取った。しばらくして二人の警察官がやってきた。

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