洒落怖
埋められた鳩

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「埋められた鳩」13

「人間とはそういう業を背負っている。
生きとし生けるものの営み、食う食われるの関係外から干渉し、奪い尽くしていく。
ほら、あのゲームと一緒さ。
ちゃらららーちゃらららららーらららっらーちゃららーちゃららーらーらー、
ちゃらららーちゃらららららーらららっららららーらららーらーらー、って」
「……なんですかそれ」
「君はモンスターハンターを知らないのか?」
意外そうな顔で、先輩は俺に問う。
「聞いたことはありますけど……俺、ゲーム機持ってませんし」
「パソコンはあるだろう、フロンティアやりたまえ。
絶対にはまる……と、こんなことはどうでもいいな」
先輩はそう言って、一つ息を吐いた。
「死ぬ前に君に会えてよかったよ。葬儀には来なくてもいいからな」
「そんな……」
「人が間違った弔われ方をするのを見たいのか?」
先輩は、少し怒ったような顔をして言った。
「少しは気を使いたまえ。
これでも私は、女なんだ」
「いえ、参列させていただきます。
貴女の魂が、せめて正しく死ねるように」
俺は本心から言った。人間が弔うのは、遺体ではなくその心、魂を想ってのことだと、俺は思うから。
すると先輩は、少しだけ顔を赤らめて、
「君は馬鹿だ」
と、酷く適切なコメントを言った。

続く

681 自治スレでローカルルール他を議論中 sage 2010/10/18(月) 21:26:04 ID:ri7Mty6fO

「埋められた鳩」14

もしあの日、鳩を埋葬していなかったら……
そう考えると背筋が凍る。
例の工場だが、この前取り壊されて更地になってしまった。
結局、あれが悪霊だったのか、或いはたちの悪い悪戯だったのかは、今でも分からない。
だけど、もし本当に鳩が俺を憎み、殺させまい死なせまいとしているのならば、果たしてそれは呪いなのだろうか。
祝福も呪詛も、対象の状態を固定することに違いはない。
あるとするならば、それは、込められている感情の質。
或いはこうも考えられる。
鳩が俺に、人にとって正しい死に方をして欲しいと願っている、と。
人の埋葬は異質だ。対象が肉体ではない。
弔われるのは死者の魂であり、心である。
何故なら人という生き物は、総じて心を持ってしまっているのだから。
だからこそ、人は生物として間違った死に方をする。
心を正しく死ぬために、その肉体を蔑ろに死ぬ。
……どちらが正しいのかは知らない。
だけど俺は、そのことを知っていたのではないかと思う。
あの日俺が、その魂を正しく埋葬した、平和の象徴たる一羽の鳥は。
「まあどちらでも、違いはない、か……」
俺はそう嘯き、煙草の灰を灰皿に落とす。
そしてマウスを動かすと、誇らしげにデスクトップの片隅に佇んでいる、
モンスターハンターフロンティアのショートカットをクリックした――

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埋められた鳩