洒落怖
埋められた鳩

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続く

671 自治スレでローカルルール他を議論中 sage 2010/10/18(月) 20:43:10 ID:ri7Mty6fO

「埋められた鳩」7

俺はAに頼まれて鍵穴の辺りを叩き壊して、
昔俺にピッキングとかの技を教えてくれた先輩から一度だけ聞いた車の直結方法を思い出しながら、それを試した。
エンジンがかかり明かりがつくと、なにが車を押し潰そうとしているのかが見えた。
人間の手が無数に車に張り付いてもの凄い力をかけていた。
T「早く出せ!潰されてんぞ!」
A「分かっている!アクセルが効かないんだ!」
Aはアクセルを何度も踏み込み、実際にタイヤは回っているのだが、明らかに手たちの力が勝っていた。
いよいよフロントガラスが砕けようとするかしないかの刹那に、どこからか、鳥の羽ばたきが聞こえた。
その瞬間、手たちは一瞬だけその力を弱めた。
一瞬で十分だった。
アクセル全開で車は走り出し、あっという間に敷地外に走り出た。
工場から1キロぐらい離れて、車から降りた。
見ると、車自体にはなんの損傷もなかった(俺が破壊した部分を除く)。
普通ではない点は二つ。
車体に大量についた、機械油の手形。
そして車の屋根の上にあった、鳩の羽根。
俺「もしかして、あの時の鳩なのかも知れない」
K「……ああ、あれか。多分、そうだろうな」
AとTにそのことを話すと二人とも俺に感謝した。
鳩抜きにしても、車を起動させたことに。
その後、俺たちがあの廃工場に行くことはなかった。

続く

672 自治スレでローカルルール他を議論中 sage 2010/10/18(月) 20:45:01 ID:ri7Mty6fO

「埋められた鳩」8

後日。
もうずっと入院している先輩のお見舞いに行った。
この人は今の親が医者で、
血筋は魔術師の家系で、
自分は錬金術師で、
読むだけなら世界中の全ての言語が分かって、
写真記憶が出来て、
俺にピッキングの技術やツールをくれて、
病気で高校を中退してて、
とりあえず多芸な人だった。
まあ自称が多かったけど。
で、病室でこの話をしたらにやりと笑ったんだ。
「違う。違うんだよ、それは。
ここじゃなんだし、ちょっとついてきて」
そういって、先輩はいきなり自分の腕から点滴の針を引き抜いた。
「いいんですかそれ?」
「あーいいのいいの。どうせ生理食塩水だし。
点滴していたほうが病人らしいからね」
そういって廊下を歩いていく先輩を追うと、先輩はナースステーションで看護師さんに声をかけた。
「あれ、ある?」
「はい、これ。……無理しちゃ駄目よ?」
「分かってる分かってる」
笑いながら、先輩は受けとったもののうちの一つを俺に投げて渡した。
パンの耳だった。
先輩は受けとったもう一つのもの、どこかの鍵をくるくると指で回しながらエレベーターに乗る。
俺が乗ったことを確認すると、最上階のボタンを押した。

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