洒落怖
去年の出来事

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俺が泣きながらポカンとしていると、

「言ってみりゃ、兄さんを捕まえようとしている化物がいる。必死にこっちへ手を伸ばして
いるんだが、障害物に隠れて良く分かってねえし、手もうまく突っ込めてねえ。
手の指先に兄さんが引っ掛かってるんで、何とか掴もうとしてんだ。
障害物が兄さんのお守りさんだ。指先が兄さんが見てる変な男。
縁て言うのは、兄さんがそこに居ると化物が知っている事って例えになるのかな。
だから、障害物が壊れないうちに、指先をぶった斬って、兄さんを隠しちまえば良いんだ。
そうすれば、化物もあきらめて次の獲物を見つけに行くよ。その位なら俺にもできるってことだ。」

そう言われて、すごく納得した。

260 去年の出来事 1/5 sage 2010/10/31(日) 01:20:33 ID:B9Z258Oh0
そして、爺さんの数珠を持たされて、爺さんの読経を2時間近く聞いた。
もう良いぞと言われた後、今後のことについて言われた。

「その数珠は、俺の親父の形見で大事なものだけど兄さんに貸す。肌身離さず持て。
数珠を持っていれば、化物でも簡単にはわからんだろう。
化物と完全に縁が切れたかどうか調べるから、俺が良いと言うまで毎月ここに来い。
そして、変な男に憑かれた場所には二度と近付いちゃならねえ。
多分払われた男は、あの死んだ場所に戻るだろう。近くに必ず化物がいる。
そこに近付いちまったら、数珠なんか効果は無い。
今回は、化物も様子見みたいなもんで本気じゃなかったと思う。
簡単に憑り殺せると思ったのが、思わぬ反撃をくらって、手を引っ込めた隙に
逃げられた。逃がした獲物が目の前に現れたら、間違いなく本気で来るぞ。
そうなったら助けられない。助けるどころか兄さんを通して、必ず俺の所にも来る。
皆死ぬんだよ。そして、縁が切れたら出来る限り今回の件は忘れろ。
忘れるのが一番良いんだ。」

爺さんから言い聞かされて帰った。
その日から男の夢は見なくなった。
261 去年の出来事 追加 sage 2010/10/31(日) 01:24:01 ID:B9Z258Oh0
正しく言えば見る事はある、しかし寝直せば見る事はないし、ごく偶にだ。
ずっと数珠は持ったままだ。寝る時は腕に付けて、更にセロハンテープで止めていた。
1週間後に会社も辞めた。実家に戻って零細企業だが就職も出来た。
そして、1ヶ月に1度爺さんの家に顔を出す。
先月になって、漸く爺さんの安全宣言が聞け、形見の数珠は返却した。
だけど、念のため爺さんが作った数珠を頂いた。
セロハンテープ止めまではしていないが、寝る時も腕に付けている。
もう来なくて良いと言われたが、俺は爺さんが死ぬまで通い続けるつもりだ。

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  • 匿名 より:

    忘れてなくて草

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