洒落怖
桜の咲く頃

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「さくらさんのお骨を、分けて頂けますか・・・?」訝しげにAを見るご両親。
「5人でよく遊んだ公園の、桜の木の下に埋めてあげたいんです」俺が続ける。

「気持ちは分かるけど、お寺さんに相談しないと・・・」ご両親が戸惑っていると、
やり取りを聞いていた住職が「ご家族がお許しになれば、いいでしょう」と許可してくれた。

俺らは葬儀のあと、泣きながらさくらの一部を、満開の桜の木の下に埋めた。

539 7/10 2010/04/02(金) 03:02:14 ID:KLj3yh2Q0
俺らは進学、就職と別々の道を歩いた。俺とAは進学、Bはフリーター、Cは就職した。
それぞれが忙しく日々を過ごし、さくらの忌まわしい出来事は考えないようにした。
もちろん、何かの折には公園を訪れ、桜の木の下で座りながらさくらのことを考え、
語りかけたりもした。自分勝手だが、さくらとの綺麗な思い出だけを考えていた。

翌年の成人式。久々に4人で顔を会わせ、近くの居酒屋で昔話に花を咲かせた俺ら。
酔いが回り始めた頃、Cが唐突に言った。

「さくらに会わないか?」

Aが過敏に反応した。「お前、よくそんなことが・・・」
慌ててCが釈明する。「いや、公園に行こうって言ってんだよ!」

Bはあの時のように、あまり乗り気ではなく「ゆ、幽霊にでもなって出てきたらどうすんだよ・・・」
と怯えている。CはBの背中を叩き、さくらなら幽霊でも会いたいだろ、と笑って言った。
Cなりに、あの出来事にけじめをつけようとしていると思った俺とAは、公園に行く事に同意した。

540 8/10 2010/04/02(金) 03:03:43 ID:KLj3yh2Q0
4人で公園に来るのは、さくらを埋めたあの日以来だった。
夜風が酒で温まった体を容赦なく冷ましていく。桜の木の幹は冷たく、春の訪れを遠く思わせた。

「さくら、会いてぇよ・・・」

Cが呟いた。ずっと好きだったのに、と続けた言葉に、全員が頷いた。皆が言いたくて言えなかった
言葉だ。俺もだよ、とAが、俺が言う。いつまでも好きだ。Bが言い、誰ともなく手を合わせた。

「ひいいいいいい!!!!!!」

あの日と同じように、Bが叫んだ。桜の木の後ろから、あの日のさくらが、あの日の姿でゆっくり
現れた。あの日と違うのは、憤怒の表情と、体全体を覆う痛々しい生傷、そして、股間からの
夥しい出血だった。
さくらはゆっくりと俺らの方に、Bの方に近づいていく。Bは腰を抜かし、口からは泡を吹いている。
俺、A、Cは金縛りにあったように、その場を動けずにいた。

542 9/10 2010/04/02(金) 03:05:19 ID:KLj3yh2Q0
「許して、許してぇ!!」Bが震え、上ずった調子外れの声をあげる。さくらはBの目の前まで来ると、
Bの中に入り込むようにスッと消えた。

途端、Bが物凄い勢いで嘔吐を始めた。ガックリと膝を折り、うつ伏せて吐く。血も混じっていた。
吐き終わると、今度は口を滅茶苦茶に動かし始めた。Bの口からは血と汚物がとめどなく流れた。
舌と口の内側を食い千切っていると気づいたときには、Bの体は痙攣し、Bは呻き声を上げながら
白目を剥いていた。

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