洒落怖
六年一組(長文)

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「知りません・・・」

その言葉を聞いて内木の顔から血の気が失せた。
「そ、そんな・・・」
「バカ者!」

 バシィン!!

 追い討ちをかけるように岩本の平手が内木の顔に叩き込まれた。
「クラスメイトに責任を押しつけるなんて最低な行為だぞ! お前はテスト白紙で出せ!!」
 クラス中の嘲笑が内木の耳に響く。内木の頭の中はもう絶望で一杯だった。

 そして何事もなかったようにテストは始められた。筆記用具のない内木にはテストに
答えを書くことができない。真っ白な答案用紙の裏面をただ見つめていた。やがて彼は回り
に見つからないように、折れたエンピツを自分の右手に刺した。心の中で彼はこう叫んでいる。
「ちくしょう! ちくしょう! ちっきしょう!!」
 声にならない叫びを、自分の手に叩きつける。彼の右手は血に染まった。
「ううう・・・」
 血に染まった自分の手のひらを内木は見つめた。

 テストも終え、その日の授業はすべて終えた。牧村は内木に合わす顔もなく、すばやく
帰ってしまった。蛭田たちは岩本に「高橋くんに折られた」と言った事が気に入らなかったらしく、
内木を袋叩きにするため彼を探した。しかし内木はどこにもいなかった。まだ机には彼の
ランドセルもある。しばらく内木を待ち伏せしていた蛭田たちだったが、夕刻を過ぎても
内木は現れず仕方なく彼らも帰ろうとした。
「今日の分も、明日やってやればいいじゃん。帰ろうぜ」
 子分二人もそのまま蛭田に続いて帰宅した。

その日、岩本は当直だった。この小学校は当時まだ教員が交代で当直を担当していたのである。
 岩本は本日に行われたテストの採点を行っていた。
「阿部・・・ 75点と・・・ ん?」
 白紙の答案用紙があった。しかし、裏面に赤い文字で何か記されている事が分かった。
「なんだ?」
 岩本は答案を裏返すと息を呑んだ。そこには血文字でこう書かれていたのである。

「みんなころしてやる」

「これは血文字? 内木め、悪ふざけしおって! 明日は灸をすえてやらねばならんな」
 やがて校内見回りの時間となったため、岩本は懐中電灯を片手に校内を回った。見回りを
はじめてしばらく経ったころ、ある一室から物音が聞こえた。

 ゴトリ・・・

「なんだ?」
 岩本はその一室に入っていった。理科準備室である。準備室に入ると何故か岩本の持つ
懐中電灯は消えてしまった。スイッチを何度押しても点灯しない。やむなく彼は愛用の
ジッポライターを着火した。

ボッ

「うわ!」
 少し明るくなった室内で岩本が見たもの。それはヒトの形をした人形だった。
「な、なんだ。人体標本か・・・ 驚かせやがって・・・」

そう岩本が安堵したその直後だった。

ガターン!!

 一つの首吊り死体が岩本の背後に落ちてきた! 太いロープで自らの首を絞めぶら下がる
死体であった。
「げぇ! 内木!!」
 岩本は驚きのあまり、思わず持っていたジッポライターを手放してしまった。ライターは
床にポチャンと落ちた。何かの液体がまかれていたようである。灯油だった。

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  • 匿名 より:

    ガラケの時からあったよな
    随分昔のネタ

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