洒落怖
六年一組(長文)

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「アッハハハハ!!」「きたなーい!」
 心無いクラスメイトたちの嘲笑と侮蔑の言葉が内木を切り刻む。
「あああ・・・」
 内木はしゃがみこんで、泣いていた。牧村は、無念そうに彼を見つめる。彼にはこの状況で
内木をかばうほどの度胸は無かったのである。

 イジメは蛭田と子分二人だけではなく、やがてクラス全体に伝染していった。
 給食の時、当番の配膳に内木が並んでいると、当番の者はわざと内木の食事を床にこぼし、
それを土足でふみつけ、それを皿ですくいあげ、彼に渡した。戸惑う彼に、当番の者は複数で
内木の口をこじ開け、無理やり食べさせた。
 そのおり、いや彼はいじめられている時、牧村にすがるような視線を見せた。しかし、牧村
にはクラス全員を敵に回しても内木を救う度胸は無かった。その視線に気づかないふりをして、
そして自分は決していじめる側に転じないことだけで精一杯であった。彼は知らない。
 イジメを見て止めなかった者。その者もイジメを行っていると同様だということを。

 そしてある日、この日はクラスで実力テストが行われる日であった。担任の岩本は前日に
エンピツを削ってくるようにと生徒たちに伝達していた。内木はその言いつけを守り、ちゃんと
エンピツを削ってきた。
 蛭田の子分、高橋がそんな内木の筆箱を開けた。
「どうだ、内木ちゃんとエンピツを削ってきたか」
 高橋は削ってあるエンピツ数本を握った。
「あ、高橋くん、何を」
「なんだよ、削ってねえじゃんかよ!!」

 ボキィ!

 高橋は内木のエンピツすべてを叩き折った。
「ああ!」
 この時は牧村も勇気を出した。自分の削ったエンピツを持った。
「内木くん! ボクのエンピツを!!」

だが、その牧村の肩を蛭田が押さえた。
「牧村」
「う・・・」
「このクラスで内木の味方をする者はお前だけだぞ」
 いつの間にか、クラス全員が牧村を睨んでいた。驚くことに、女子に至るまで全ての
人間が牧村を睨んでいた。
「テメエも内木と同じように総スカン食らいてえのか?」
「うう・・・」
 蛭田に睨まれ、牧村は動けなかった。これ以上、内木の味方をすることは許さない。蛭田は
そう言っている。牧村は内木にエンピツを渡せなかった。やがて担任の岩本がやってきた。
 答案用紙は配られ、今は裏返しで机の上に置き、岩本の「始め」の指示を待つだけである。
 その前に岩本は一人一人の机を見て回った。
「どうだ。エンピツは削ってきたか。・・・ん?」
 岩本は内木の机で止まった。
「なんだこのエンピツは!」
 内木は勇気を出して言った。
「た、高橋くんに折られてしまいました・・・」
 そう蚊の鳴くような声で訴えた。岩本は高橋を見た。
「高橋、本当か!?」
「ええ~ ボク知りませんよ~」
 うすら笑いを浮かべて、高橋は否定した。
「じゃ、じゃあ牧村くんに聞いてください」
「おい、牧村、お前知っているか」
 内木は牧村を祈るように見つめた。同時にクラスの睨む視線が牧村に集中する。ここで
内木を弁護すれば、明日から自分も内木と同様にいじめられる。そう思った牧村の口から
出た言葉。

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  • 匿名 より:

    ガラケの時からあったよな
    随分昔のネタ

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