洒落怖
老婆と娘

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野原に寝そべって山の風を感じていると何かが顔に当たった

ん? 雨・・・か?
それは通り雨のようだった・・・ものすごい快晴なのだがパラパラと雨が降ってきた
最初は心地よかったが一応、木陰に入ってやり過ごそうと移動した
ふと、降り注ぐ雨の向こうに何かが動いているのが見えた・・・

何だろう・・・?
何かの行列のようだ・・・自分が歩いてきた道を森の丘のほうへと進んでいるようだ
目を細めて見てみるが、ハッキリとは見えない・・・雨による土煙と蜃気楼によってゆらめいて見える・・・
次第に雨脚は強くなり、そのうちそれは見えなくなってしまった

どれくらい時間がたったのだろう
木陰でウトウトと眠ってしまったらしい
見ると雨もすでに止み、夕日が辺りを照らしている・・・
自分はしまった・・・と思い、急いで宿の方向へと歩を進めた

932 本当にあった怖い名無し sage 2012/04/10(火) 00:28:49.27 ID:Ruo2XUQR0
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雨で濡れた砂利道を早歩きで進む・・・周囲を取り囲む田からは早、すず虫の鳴き声が聞こえ始めていた
折角の観光中に居眠りをしてしまうなんて・・・時間を無駄にしたやるせなさと、気が付けば早く葉子さんに会いたい、
と思っている自分がそこにいた・・・雨に濡れた木々は陽光により眩しいくらいにキラキラと輝いていた・・・

あれ?という違和感とともに自分は歩くのを止めた

ちょうどここは昨夜、老婆から宿の場所を教えてもらった場所である
こんな所に・・・あったかな・・・?
よく見るとそこには道をまたぐようにして大きな鳥居が立っていた・・・
おかしいな?昨夜は暗かったから見えなかったのかな?しばらくそこで考えていたが、日も暮れかかっていたのであまり考えず、さっさと宿に戻った

玄関を開けると、今日は葉子さんが出迎えてくれた・・・
密かにガッツポーズを取ると、葉子さんは自分に寄り添うようにそのまま部屋まで付いて来て、お茶を入れてくれた
隣に座り、丁寧な手つきで用意をしてくれる・・・時折、自分を見つめてくれる黒い瞳は、まるで万華鏡のように煌く輝きを持ち、雨の後に葉を伝う水滴のように潤んでいた・・・堪らない・・・彼女の呼吸のひとつさえ愛しく思えてしまう・・・

ふと会話が途切れ、見つめ合うと・・・彼女の透き通るような白い顔が紅色に染まっている・・・
彼女の全身から溢れるオーラと自分に向ける熱い視線から、彼女も自分と同じ気持ちなのだとわかる・・・
これが恋に落ちるということなのだろうか・・・自分の頭の中には仕事や別れた彼女のことなど、とうに消えていた・・・

その日、宿には婆さんや他の客はおらず、自分と葉子さんしかいないと言う・・・
二人で並んで座り夕飯を済ませる・・・風呂で背中を流してもらい、そして・・・床を供にした・・・

自分は・・・葉子さんを抱いてしまった・・・
時間を忘れて・・・何度も何度も・・・旅先でこんなことになるなんて・・・しかし、いささかの疑念もそこには無かった・・・
男と女の織り成すきわめて正常な愛の証がそこにはあった・・・

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