洒落怖
老婆と娘

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930 本当にあった怖い名無し sage 2012/04/10(火) 00:27:20.15 ID:Ruo2XUQR0
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民宿というイメージから精進料理のような期待感しかなかったがどうして、魚や肉、天ぷら、吸い物と食べ切れないくらいの量の器が並べられていた・・・普段コンビニ弁当が主食の自分にとっては、よだれモノの数々だったのだ・・・

座布団に座り食べ始めると、娘さんがお酒を持ってきてくれた・・・地酒だという・・・喜んでお酌をしてもらうのだが、先程とは違い、娘さんを意識して緊張・・・うまく話せない・・・年の頃は同じくらいだろうか・・・品があり、落ち着いていてしっとりとした大人の雰囲気・・・仄かな香の匂いが鼻腔をくすぐる・・・

思い切って名前を聞くと、・・・葉子です・・・と答えた

食事を終え布団を敷いてもらうが、緊張が収まらずなかなか寝付けそうもない
煙草に火を点け、窓側にある椅子で外の風景を眺める・・・毎日朝から晩まで休み無く働いていたのが嘘のような静寂が周りに広がっている・・・遠く、すず虫の鳴き声が早くも初秋を感じさせていた・・・

仕事の多忙さが原因で結婚まで考えた彼女との別れ・・・精神的な支えだった存在を失い、自分の生きる道に疑問が沸いていた・・・俺、このままでいいのかな・・・?

その晩、夢を見た

街でお祭りをやっている・・・
空は晴れているがパラパラと雨が降っている・・・
街の人達は何か嬉しいことがあったのか皆お面をかぶり、嬉々として踊ったり歌ったりしているようだ
ふと街の先を見ると何かの行列が行進していくようだ・・・何があるんですか?と聞くのだが皆、答えてくれない・・・
そして人ごみの中に、宿を教えてくれた老婆の後姿を見つけたが、いつの間にか見失ってしまい・・・目が覚めた

変な夢だったな・・・
窓から眩しい朝日に照らされた外の風景を見ながら煙草を吸っていると、宿の婆さんが朝食の支度をしてくれた
どうやら娘さんは早朝に出かけてしまったらしい・・・残念だな、と思いつつも身支度をして観光に出かけた
ここには二泊ほどするつもりだった

931 本当にあった怖い名無し sage 2012/04/10(火) 00:28:02.95 ID:Ruo2XUQR0
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外に出ると山間の田園地帯特有のひんやりとした空気が心地よい
やはり来て良かった・・・と、カメラであちらこちらの風景を撮る・・・
山の木々から差し込む木漏れ日が地面の苔や岩をくっきりと浮かび上がらせる・・・自然の織り成す美のコントラスト・・・
時間が経つのも忘れシャッターを押し続けた

時計を見ると正午をまわっている
昼飯にしようかと、宿の婆さんが作ってくれた稲荷寿司を頬張る・・・うまい・・・故郷の婆ちゃんを思い出す・・・
その後も街には行かず、のんびりと山々と田園風景を散策し、カメラで撮り続けた・・・
会社から携帯にメールが何通か届いていたが無視しておいた・・・折角のリフレッシュを邪魔されたくはない

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