洒落怖
老婆と娘

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自分は上げかけた顔を・・・再び下げてしまった・・・

葉子さんは静かに・・・本当に静かに上へと歩を進めた・・・

自分は長い・・・長い時間、その場所で声を殺して泣き続けた・・・

すべての気配が消えた後、静かに目を開けると・・・葉子さんの立っていた足元には、涙の跡と思えるもので濡れていた・・・
自分は再び泣いた・・・葉子さん、ごめん・・・ごめん・・・ごめん・・・ごめん・・・

そのまま意識を失った・・・
気が付くと森に朝日が立ち込めていた・・・山鳥の鳴く声が聞こえる・・・

顔中、涙のあとでくしゃくしゃだった・・・
呆然とする中で、自分はポケットから携帯を取り出した・・・

あの時、籠の中で鳴ったメール・・・それは元彼女からのものだった・・・
もしもあの時、メールが来なかったら・・・
自分の魂は引き抜かれ、あっちの世界で葉子さんと夫婦になっていたのかも知れない・・・

自分はそのまま元彼女に電話をかけた・・・

938 本当にあった怖い名無し sage 2012/04/10(火) 00:32:07.13 ID:Ruo2XUQR0
11/11

もしもし?俺クン?あ、メール見た?w そうDVD!うちに置きっぱなしでしょー?
え?今度一緒に見よう・・・って・・・俺クン、どーしたのー??? だってあたし達・・・
うん・・・わかった・・・ホント・・・? うん、嬉しい・・・あ、なんかごめん、嬉しくて涙が・・・あたしもゴメンね・・・うん

自分は彼女への電話を終えると、宿へと戻ってみた

そしてそこにあったのは・・・民宿ではなく祠であった・・・さらに大量の枯れ葉がそこにはあった・・・
途中にあったはずの鳥居もなくなっている・・・
この数日の間の出来事は何だったのか・・・自分は街で稲荷寿司を買ってくると、その祠へお供えしてきた・・・

その後、街の駐在所であの丘の神社について聞いてみた・・・
分かったのはそこは稲荷神社であること、頂上の神社にはつがいのお稲荷様が祭られていること、しかし雄の稲荷像が数年前(以前、老婆が自分の夢に登場した頃)、何者かに盗まれてしまったこと・・・などであった

何とも言えない気持ちの中、駅で帰りの電車を待っていると、一陣の風が吹いた・・・

それは確かに葉子さんの香りを漂わせていた・・・
自分は再びこみ上げる想いを我慢しきれず、ホームにうずくまり泣いてしまった・・・

あれ以来、しばらくの間はこれで良かったのか・・・と悩むことも多々あった・・・
しかし今ではこれで良かった、と思うようにしている・・・
本当に愛すべきは、自分をこの世に留まらせてくれた元彼女であって、葉子さんではない・・・と・・・
そして葉子さんのつがいの像が1日も早く見つかることを・・・今でも祈っている・・・

但し、老婆については・・・その後、何度も登場してきた・・・それはまた次の機会に書くことにする
そして、あれだけ撮った写真には・・・すべて枯れ葉しか写っていなかった

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