洒落怖
老婆と娘

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927 本当にあった怖い名無し sage 2012/04/10(火) 00:24:29.51 ID:Ruo2XUQR0
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あれは今から一年半くらい前のことだった

2010年の9月頃・・・その当時、自分は担当しているゲームソフトのマスターアップが終わり久々にまとめて休みが取れたので中部地方のとある農村を訪れることにした・・・
その少し前に数年付き合った彼女と別れてしまい、その傷心旅行も兼ねての旅だった・・・

そこは都会からかなりの距離、離れている山間の農村・・・
一応、観光地であるが未だ残暑の面影が強く、目的地までの電車に降り注ぐ陽光は額にうっすらと汗を滲ませるには十分だった

朝、都心を出たにも関わらず到着時には陽も暮れかけ、夕日が豊潤な山野を赤く染め上げていた
ガタゴトと揺れる電車の窓から見える景色の移ろいは、一瞬だが都会でのストレスを忘れさせてくれる気がした

駅に着き、去りゆく電車を見送りった後、辺りを軽く見回す・・・
随分と時代を感じさせる駅だ・・・無人駅ではないものの、柱の所々に腐ったようなささくれが目立つ構内だった
そして改札を抜け真っ先に視界に飛び込んできたのは、昭和の煤けたような香りのする寂れた景観だった

約半年の間、休日が無かったことで鈍った感覚と脳をリフレッシュさせるには、やはりこれくらいのレトロ感が必要だ・・・脳が無意識のうちにそう感じとっていた

街のメインストリートと思しき商店街をぶらつく・・・まるでここだけ時代が止まっているかのような錯覚に陥る・・・
幾人かの観光客とすれ違うも、どこかセピア色の写真を見ているかのように感じる・・・
首から下げたデジカメのシャッターを無心で何度も押す・・・いい所だな・・・

およそ300m程続いた商店街を抜けると、そこには一円の田園風景が広がっていた
ギラギラと照りつく夕日で田には陽炎が見てとれ、何とも形容しがたい神秘さを醸し出していた・・・
ふと右手を見ると森の中に小高い丘があり、そこの頂上付近には神社らしき建物があるのが見てとれる
自分の出身地も田舎の寒村だが、それとは違う静寂さに包まれた風景に無心でシャッターを押していた

928 本当にあった怖い名無し sage 2012/04/10(火) 00:25:26.44 ID:Ruo2XUQR0
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完全に日も暮れ、街灯に火が点る・・・
ゆっくりと歩いてきたつもりの街も、気が付けば遠くに見えるではないか
自分でも気がつかない間に、結構な距離を歩いてきてしまっていたようだ・・・

今回、敢えて宿は予約してこなかった・・・自分としては珍しいのだが、たまには行き当たりばったりで旅を
楽しんでみようと考えていたからだ・・・
理由はリフレッシュというより、失恋が原因と言ったほうが適切かも知れない・・・別に野宿でも構わないのだ

街に戻れば宿もあるだろう・・・しかし戻るのは何故か悔しい気がしたので、そのまま街の外れを更に奥へと進む・・・
山間部にある田舎の闇は深い・・・あれだけギラギラしていた風景が、街灯こそあっても大きな穴のようにどこまでも光を飲み込んでしまうような錯覚さえ覚えていた・・・

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