洒落怖
カラオケ好き

この怖い話は約 3 分で読めます。

90年代後半の話だから、もう十数年たつのか
当時、東京で彼女がいたが、彼女は家庭の事情で福岡に帰らなければならなくなった
そこで遠距離恋愛、ということになる
彼女に会いに初めて福岡を訪れた時、おれも彼女も繁華街に土地勘がなく
ラブホ探しに苦労した
ようやっと見つけたそれらしい場所
がらりと引き戸を開けると、例のラブホ特有の手元しか見えないカウンターはなく
普通の民家のような趣き
「こんちは」と声をかけるとババァがひとり現れて
「ご休憩でよろしいですかぁ」
おお、一応ラブホじゃん、と安心し部屋に案内してもらう

「今、お茶お持ちしますからねぇ」
といってババァ去る
要はさっそくおっぱじめるな、ということであろう
四畳半くらいの和室、そこに無理矢理という感じでバスルーム――というか風呂がついてる
ベッドサイドの壁に横長に貼り付けられた鏡だけがラブホでっせと主張している
テレビはがちゃがちゃ式の回転チャンネル
「明るいの、恥ずかしい」と、彼女が言うので
窓の片側にまとめられていたカーテンを閉めると、これがまた縦にズタズタに裂け目がはいっている
ここに及んでおれたちは笑い出した
「なんだここw」
彼女は”見える”ひとで、高目のシティホテルなどをとっても、部屋のあそこの角が気持ち悪い
とかなんとかいい出し、なんにもせずにチェックアウトなどということもまま、あった
「いかにもいそうな部屋だけど?」訊くと彼女は
「うん。いる。そこそこの数」
でも害意のあるモノはいないそうである
そこでおれたちは始めた
「壁の鏡、見ないほうがいいわよ」
「なんで?」
「んー。エッチが出来なくなるから?」
よくわからないが、見る気もないので詳しくは追求しない

967 2/2 sage 2010/06/30(水) 12:27:21 ID:1E9jpzWs0
チェックアウトの後、彼女がしきりにおれの肩や自分の身体を人差し指と中指ではじきとばすような仕草をする
こういうことは慣れているので、されるがまま
「昭和っぽいってこういうこというのかな」
「かもね」
その後、夜までの時間潰しにカラオケに行った
お互い何曲か歌った後、彼女が昭和歌謡の名曲、黛ジュンの「天使の誘惑」をいれた
若い連中とカラオケに行くと、意外に古い歌を知っていることがあるので、別に不審は抱かなかったが
オケが鳴り始めても彼女はマイクも持とうとせず、手拍子したり「イエー」などと合いの手をいれている
「なんで歌わないの」
「この歌知らない」
「じゃあなんで入れたの?」
彼女は無人のステージを指し示し
「彼女が歌いたいっていったから」
ついてきちゃった、というヤツだ
その後しばらくおれも知らないような昭和歌謡のカラオケ鑑賞会になり、やっと彼女は新しい曲を
入れるのをやめ、
「もう出よう」といい出した
「楽しかったって。また連れて来てほしいって」
「その子はあの連れ込み宿(ラブホとはいえないわな)にいるの」
「うん」
二度と行くか、カラオケ好きな俗っぽい幽霊なんかに会いたくもないし

この怖い話にコメントする

カラオケ好き
関連ワード