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睡蓮
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469 : 3/3 : 2012/04/07(土) 10:15:54.38 ID:VGJ2c4aB0
展覧会が終わるのを待たずに、仁代は玉園の家を去り、故郷の博多へ帰っていった。
「あれほどの栄誉の後に、なぜ絵筆を捨てるのか」という玉園の詰問にも、涙ぐむだけで何も答えなかった。
一年後、玉園は長崎で行われる画会の道すがら、博多で途中下車して仁代の家を訪ねてみた。
そこにいたのは、母子二人きりの粗末な家でやつれきった仁代の姿。
部屋の中には、生活のために請け負った土産物用の素焼きの人形が数十も転がっていた。
涙ながらにひとしきり再会に浸っていたが、やがて玉園の汽車の時間が迫った。
仁代は玉園に対し、土産にと人形をひとつ差し出す。
その彩色の鮮やかさに、玉園は改めて仁代の才能を惜しんだ。
ふと玉園はその顔が、知人の誰かに似ている気がしたが、誰であるかまでは思い至らなかった。
博多のとある百貨店には、「睡蓮の精」と銘された人形が陳列されている。
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