子どものころの怖い話
隙間人間

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それ以上彼は何も言わず、僕らは黙って夕飯の時間まで公園のベンチで並んで夕焼けを見ていた。

758 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/05/25(日) 18:03:36.29 ID:XnD3GGsB0.net
僕らはそれからも変わらず仲良く日々を過ごした。
彼もあの日以降隙間人間の話をすることもなく、僕は隙間人間の事なんてその内すっかり忘れてしまった。

それから一年、二年と過ぎ、僕と彼は五年生になっていた。
相も変わらず僕と彼は学校が終わると一緒に帰り、そのまま僕の家によって鞄を置いてから遊び、夕飯を食べ風呂に入るまで毎日一緒に過ごした。

殆どなにも変わらなかったが、唯一、彼が親に虐待に近い体罰を受け始めた事が大きな変化だった。
始めに気付いたのは僕で、風呂に入っている時に、彼の背中に小さく丸い火傷の跡を見つけてしまった。
「父ちゃんが、生意気だって、煙草を押しつけてきたんや」
彼はそう言うと湯船に顔をつけ、それ以上何も言わなかった。

僕は母親にその事を打ち明け、何とかして欲しいと頼んだが、
「ここにこれなくなるかもしれんから、お願いだから何も言わんといて!」
と彼が必死に僕の母親に頼むものだから、怪我をしたら直ぐに言う事を条件に、それ以上深入りしない事を僕の家族は約束した。

それから、風呂に入る度に彼の体に傷や痣がないかどうかを確認するのが、僕の日課になった。
彼の体からは、毎日新しい痣が発見された。
その度に僕の家族は彼の傷に薬を塗ってあげた。
「僕、中学生になったら、絶対あの家から逃げ出すわ。もう、本当にいやや」
彼は手当をされながら、涙をにじませてよくそう呟いていた。
「じゃあさ、もう完全にうちの子になっちゃえよ。本当の兄弟になろうよ、僕たち」
僕がそう言うと、彼は本当に嬉しそうな顔をしていた。

759 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/05/25(日) 18:04:23.87 ID:XnD3GGsB0.net
そのまま時が過ぎ、僕と彼が六年生の夏休みを間近に控えたある日、彼が突然学校を休んだ。
最近は体も大きくなり、昔に比べてだいぶ丈夫になった彼が珍しい事もあるもんだと、僕は学校から預かったプリントを手に、久しぶりに一人で帰る家路を急いでいた。
昔ほど怖く感じなくなった繁華街を通り、昔よりも更に生い茂った生け垣を越えて、僕は彼の家の玄関についた。
念のためチャイムのボタンを押してみたが、三年前と同じく、やはりチャイムは壊れたままだった。
僕は玄関のガラス戸を叩いて家人を呼んだが、家の中からは何の音もしなかった。
暫く僕は待ってみたり、再びガラス戸を叩いてみたりしたが、結局いつまで経っても誰も出てくる事はなく、僕は引き戸の隙間にプリントを押し込んでから自分の家に戻った。

翌日も、その翌日も、彼は学校を休んだ。そうしてそのまま、学校は夏休みに入った。
僕の母と父は彼を酷く心配し、彼の家に何度も足を運んだが、結局、彼は疎か、彼の家族に会う事さえ出来なかった。
夏休みの半ばには、近所では彼の家は夜逃げをしたのだと言う噂が流れ始めた。
そうして、僕はその後彼に会う事はなかった。

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