子どものころの怖い話
隙間人間

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彼とはいろんな話しをした。
とはいえ、兎に角彼はいつまで経っても無口で、殆ど僕ばかりがしゃべっていたのだけど。
そんなある日、彼が不思議な事を口にした事がある。
それは学校帰りに僕の家に二人で向かっている最中の事だった。

突然彼は商店街の店と店との隙間を見つめて立ち止まり、なにやらぶつぶつと呟き始めたのだ。
「あかんねん。いやや。行きたないねん」
彼はそんなことを隙間を見つめながら呟いていた。
不思議に思って僕も隙間を見てみたが、子供の僕でも通れそうにないほど狭い隙間には、ただ影で薄暗い空間が細く伸びているだけだった。
「なあ、どうしたの?」
僕が彼の肩を掴むと、彼はびくりと体を震わせた。
振り向いた彼の顔は真っ青で、僕が途惑いながら彼を見つめていると、彼は殆ど小走りに近い早足でその場を離れた。

商店街を抜け、僕の家の近くの公園に辿り着いた辺りで彼は足を止めた。
「ちょっと、待ってよ。なにかあったの?」
追いついた僕が彼に声をかけると、彼は「誰にも言わんって約束してくれる?」と言ってから、話し始めた。

757 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/05/25(日) 18:00:22.88 ID:XnD3GGsB0.net
「実はな、僕、時々変なもんが見えんねん」
「変なものって、なに?」
「あんな、僕な、家とかお店とか建物の隙間に、人か挟まってるのが見えんねん」
「え?」
「僕はな、隙間人間ってよんでる。でな、あいつら、僕を時々隙間に誘ってくるんや」
「それって、お化け?」
「分からん。でもな、隙間人間って、みんな優しそうな顔してるんや。だから多分お化けやないよ」
「意味がわかんないよ」
「僕かて、分からんよ。でもな、凄く優しそうな顔して、辛かったら、いつでもこいや。みんな待ってんねんで、って言われるんよ」
「みんな?」
「いろんな人がおんねん。いつも違う人が隙間にいるけど、偶に同じ人が挟まりながら誘ってくる事もあんねん」
「ついてったらどうなるの?」
「はっきりとは分からん。でも、多分もう戻ってこれないんやろうな。何となくやけど、それは感じんねん」
「いつから見えてるの?昔から?」
「お兄ちゃんがいた頃は見えへんかったんやけど、お兄ちゃんがいなくなってから、見えるようになったんや」
「え、お前、お兄ちゃんいたの?」
「分からん。急にいなくなったんや。母ちゃんに聞いても、お兄ちゃんなんて昔からいないって言うし、僕がおかしいだけなのかもしれん」
「その、隙間人間とお兄ちゃんがいなくなった事って、なんか関係あんのかな?」
「分からんよ。でも、お兄ちゃんがいなくなったら急にこっちに引っ越すことになって、それからやねん、僕が隙間人間を見るようになったの」
「なんだかわかんないけど、見えても無視しろよ。寂しいじゃん。いなくなっちゃったりしたらさ」
「うん、そうするわ。ごめんな、変な話しして。でも、お前にしか、こんな話しできんやろ」

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