子どものころの怖い話
隙間人間

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家の両親が何故彼にそんな事をしていたのか僕が理解したのは、彼が風邪で学校を休んだ日の放課後だった。
彼にプリントを届けるよう先生に言われた僕は、久しぶりに一人で歩く家路にすっかり退屈しながら、昔彼が話してくれた彼の家の位置を頭に描きながら彼の家を目指した。
滅多に足を踏み入れる事のない歓楽街は、ゴミが多く少し臭かった。
妙にけばけばしい看板と、半裸の女の人が写ったチラシ画張られて電柱を眺めながら、僕は少し恐怖を覚え、早足で彼の家に向かった。
そうして見つけた彼の家は、手入れもしてない伸び放題の生け垣に目隠しされるように、歓楽街の端にあった。
醤油で煮染めたように黒ずんだ板壁の木造平屋造りの彼の家は、お世辞にも裕福そうに見えなかった。

755 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/05/25(日) 17:59:13.79 ID:XnD3GGsB0.net
僕はどきどきしながらチャイムを押したが、壊れているのか音が鳴った気配がなかった。
仕方なく僕は引き戸の玄関のガラスをノックして声をかけてみた。
すると、奥から女の人のヒステリックな叫び声と、なにかがぶつかってガラスが割れるような音がした後、彼が青い顔をして玄関を開けた。
彼は僕にプリントを持ってきてくれた事の礼を言うと、パジャマのまま靴を履いて家の外に出てきた。
玄関から僅かに見える家の奥に、派手な服を着た女性が立っているのが見えた。

「おい、外に出ても大丈夫なの?」
「母ちゃんが、ついでに酒買うてこいって言たから」

それだけ言うと、彼は僕の上着のすそを引っ張って歩き始めた。
後ろから彼の顔を覗くと、彼の顔は真っ赤に染まっていた。
彼の顔の赤さは、熱のせいだけではなかったのは小学生の僕にも直ぐに分かった。

彼と別れて家に帰った後、夕飯の席で僕は母親に彼の家の事を尋ねた。
言いにくそうに口ごもる母親に、その日の出来事を伝えると、漸くぽつぽつと母親は話し始めた。

母親曰わく、彼の家は父親が働いておらず、母親も水商売をしているとの事だった。
きっと、先程見た派手な服装の女性が、彼の母親なのだろう。
言われてみれば、確かに彼に面立ちがよく似ていた。

そして僕の母親がきにしていたのは、彼の体の小ささだった。
当時そんな言葉は一般的ではなかったが、母親が心配していたのは、育児放棄についてだった。
そして恐らく母親のその推測は、当たっていたのだろう。
彼の身長は二つ離れた僕の弟より小さかった。
たぶん、彼の小ささは育児放棄による成長不良のせいだったのだろう。

「可哀想でほっとけないのよ」

母親はそう言うと、涙ぐんでそれ以上なにも話さなかった。

756 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/05/25(日) 17:59:58.36 ID:XnD3GGsB0.net
それからも僕と彼とは兄弟のように過ごしていた。
家で食事を取り始めたせいか、彼の体も月日が経つにつれて徐々に大きくなり、活発な面も見えるようになってきた。
そうなると僕と彼はプロレスごっこをして遊ぶようにもなり、更に仲良くなっていった。

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