占い・おまじない、呪い
継呪の老婆

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332 継呪の老婆 ◆38avq92H7U sage New! 2005/12/04(日) 16:55:45 ID:orhP/4If0
「それがこれなのよ!」私は、トモが興奮を隠せずに言ったのをよく覚えている。
外では雷雨が激しさを増していた。雨粒が次々と現れては糸をひいて消えていく。
ぼんやり窓を眺めていると、車内販売のワゴンが映った。私は、顔色を変えた。
窓に映ったワゴンは、何かが違う。お菓子の代わりに積まれているのは・・・。
トモだ。トモの首、手、足がワゴンにバラバラに積まれていた。口から、紫色の
長い舌がだらりと垂れ下がっていた。私は「んぎぃっ!!」と大声を出し、
座席から飛び跳ねた。ふと我に返った私は、自分に注がれた好奇の目に赤面し、
とっさに、「あの、笹団子をください。」と販売員に告げた。

東京駅までは、まだまだ時間があった。私は、トモが死ぬ間際にかけてきた
電話のことを思い出した。断末魔の悲鳴とともに途絶えたトモの声を。
「もしもし、サト?お願い聞いて!!これじゃ、これじゃぁ・・・・・」
絶叫が響いた。後には、電話の向こうでブツブツ呟く、しゃがれた声が聞こえた
気がしたが、良く覚えていない。考えているうちに、私は眠ってしまった。

夢を見た。それは数日前の現実。私は、耳元で最後の願いを囁いたトモを強く
抱きしめ、微笑んだ。大好きな中国茶を淹れた。白い破片と干物を煎じ、お茶と
一緒に飲み込んだ。トモが涙を流し、繰り返した。「ゴメン・・。ゴメンね・・。」
私は、そっと彼女に口付けて言った。「一人で苦しんだんだね。」そして、トモの
手を握り、囁いた。「分かってたよ。トモ。あの町に代々住む人は皆、知ってる。」
目が覚めた。私は呪いを受け継いでいる。残された時間は少ない。(つづく・・・。)

333 継呪の老婆 ◆38avq92H7U sage New! 2005/12/04(日) 17:04:12 ID:orhP/4If0
 真夜中に、私は自分のベッドで目を覚ました。外では今夜も雨が降っている。
灯りもつけず、私は、妙に冷静な頭で思考をめぐらせた。私が生きている間に、
呪いを受継ぐ人を探さなくてはならない。妹のネネとナナ。そして、父の姿が
頭に浮かんだ。母親は幼少に家を出て、その後会っていない。私は首を振った。
家族を生贄に選ぶなど、私にはとても考えられなかった。信頼できる友人を
思い浮かべた。嫌いな人間を騙して飲ませようかと思った。だが、次の犠牲者
を選ぶことなど、とてもできなかった。苦悩の中、悪魔が囁いた。「いっそ、
呪いなんて拡散すればいい。私の死後何人死のうが、知ったことじゃない。」

 呪いの影は、一歩ずつ私に近寄ってきていた。最初は、郵便受けだった。
幾つもの歯型の付いた封筒が入っていた。先週は、玄関のドアノブが変形し、
そこに歯型が浮かんでいた。一昨日は、ベッドの木枠が噛み砕かれていた。
私は、寝汗でべたつく体を流すため、シャワーを浴びることにした。考えを
まとめる助けになるかもしれないとも思った。服を脱ぎ、湿った浴室へ入る。
鏡に映った自分の姿を見つめた。「まだ生きている・・。生きている・・。」
思わず私の口をついた言葉に背筋が凍り、急いで髪を洗う。目を開けると、
呪が私の顔を覗き込んでいる。そんな不気味な映像が浮かび、目を堅く閉じ、
私は急いでシャワーを済ませた。脱衣所で、髪の毛を乾かした。その時だ。
鏡越しに何かが目に映った。脱衣所の入口から覗く、白く干からびた顔。
私は目を見開いた。口からは、だらりと垂れた紫色の長い舌が、私の背後へ
伸びてきている。私の絶叫が部屋に響いた。私はうずくまった・・・。
暫く後で目を開けた。顔はもうない。突然、声が耳に響いた。「コノカワキ 
モウ スコシ・・・」。翌朝、私は実家へ向かった。 (つづく・・・。)

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