占い・おまじない、呪い
継呪の老婆

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324 継呪の老婆 sage New! 2005/12/04(日) 16:04:31 ID:orhP/4If0
 新幹線の車窓に雨が滴る。私は静かに目を閉じた。死の前日、必死で私に
すがりついたトモは、耳元で何かを囁いた。彼女の手を握り、頷く私・・。
「分かってたよ。トモ。・・・」私は、再び一ヶ月前のトモの話を思い返した。

トモは興奮していた。「その日の夜遅く私の家に来たのよ。あの婆さんが!
私、思わず「ビンゴ!!」って叫んじゃったわ。」タバコを取出し火をつけて、
「婆さんは暫く黙っていたけど、意を決し、私に語り始めたの。」トモは続けた。
トモによれば、老婆の話は次のようなものだった。老婆は、トモを心霊等の
専門家と思って訪ねてきた。有名な霊能者を紹介して欲しいと、頼みに来た。
「わしの一族は、代々この呪いを受け継いできたんよ。」老婆は言った。「けんど、
一族の者は皆死に絶え、もう引継先がないんよ。呪いを引き継ぐのが私んトコの
使命だんべの、途方にくれとったんよ。」老婆は、小さな巾着袋を取り出した。

「もう何日も残っとらんのよ!わしの、すぐ近くまで来とる!」取り乱す老婆を
トモは落ち着かせ、詳しく話を聞きたいと申し出た。老婆は、呪の内容について
語り始めた。「明治時代の初めだったんよ。この集落の浜辺に大きな黒い二枚貝が
流れついての、漁師共がすぐに貝を開いたんよ。食おうと思ったんかの・・・。」
老婆は、お茶をすすって一息ついた。トモには、海の音が異様にはっきり聞こえた
そうだ。まるで、家が海の上を漂っているかのように・・・。(つづく・・・。)

325 継呪の老婆 ◆38avq92H7U sage New! 2005/12/04(日) 16:12:35 ID:orhP/4If0
老婆が話を続ける。「二枚貝の中から一枚の紙切れが出てきたんよ。ほら、神社の
裏に祀ってあんべ?」トモは、小学生の頃遊んだ神社の裏手にある、一枚の額縁を
思い出した。「シノビガタキコノカワキ ウツセニタスクモノナシ コノウエハ 
ジョウドニテ ミタサレントホッス」心霊マニアのトモは、暗記していたこの言葉を
呟いた。「そんだ。んで、そいつが一緒に入ってたんだんべ?」老婆が袋を指差す。
「そりゃ、あれだ。砕かれた歯と、人間の舌の干物じゃ。」老婆の瞳が少し光った。
「どこから来たんか分からん。けんど、これが流れ着いてから集落のもんが次々と
死んだべ?干からびての。きっと禍々しいもんに違いねぇと、わしのひぃ婆が
色んな村に尋ねてまわったんよ。そんで、御崎郷の神主様がお払いしよったんよ。
その後は村人の死ぬ数がへったべ?けんど、完全に呪いを解くんは無理よっての。」
この昔話は、トモも聞いたことがあった。が、呪は解かれて終わる筈だった。

「んで、神主様がひぃ婆に命じんよ。一族で呪いを受け継ぐんさってな?ひぃ婆は
呪いのことを色々聞きまわって、詳しかったで、その一族なら呪いを解く方法を
見つけるかも知れんべってな。呪いを拡散させんためには、生贄が歯の欠片と
舌の干物を飲むんじゃって。歯の破片が全部無くなりゃ、それでもええってな。」
トモが袋を開けると、砕けた歯と舌の干物が入っていた。老婆が言った。「まだ、
50個近くもあんべ?戦前は10年周期くらいじゃった。年老いたもんが、進んで
引受けたんよ。けんど、戦後になって周期がどんどん早くなったんじゃ。仕舞にゃ、
毎年、引受人を選んどった。複数はあかんで、一個しか飲めんべ?わしは呪いを
調べとったで最後に残されたんよ。けんど、わしには引継先がないんよ。解呪の
法もわかっとらん。呪いは、わしが死んだら、また拡散すんべ?また沢山、
人が死ぬんじゃよぉ・・・。」トモは袋を預り、霊能者に渡すと約束したそうだ。
その数日後だった。老婆の干からびた遺体が見つかったのは。(つづく・・・。)
※ちょっと席をはずさなくてはいけないため、トリ付けときます。

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