師匠シリーズ
追跡

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471 追跡  ◆oJUBn2VTGE ウニ New! 2007/09/26(水) 21:06:47 ID:gAYKdkL30
  心の準備が出来るまで次のページには行かないほうが良い。

という文字を3回心の中で読んでから、次のページをめくった。
「……まず、ゲームセンターのようです」
実際にある場所の名前が出てくる。
俺は彼女と二人で自転車に乗ってそこへ向かった。街なかの大きなゲームセンターだ。
中に入り、一通り見て回るが師匠の姿はない。『追跡』に主人公がプリクラを撮る描写があったので、一応コーナーに行ってみたが若い女性たちでごった返していて、気後れしてしまった。それに先を読むと、結局ゲームセンターでは手掛かりはなかったということになっているので無意味だと俺は言ったが、彼女は「書いてある通りにした方がいい」と言う。
そのとき、今更ながら先に最後のオチの部分を読んだ方が早くないかと思ったのだが、彼女が「そういうことをしたと書いてるの?」と言うので首を振って諦める。
不吉な予感にドキドキしながらも、俺は俺なりにこの状況を楽しんでいたのかも知れない。
結局、連続して延々と同じメンバーでプリクラを撮っている女子高生たちにイライラしながらも順番待ちの列に並び、最後には彼女と一緒に写真におさまった。
『追跡』には主人公に女性の連れがいるとは書いてないが、まあこれくらいはいいだろう。
出てきたシールをまじまじと見ながら、俺はなんだか引っ掛かるものを感じていた。それがなんだかわからないまま、次の場所を確認する。
「次は、雑貨屋です」
ゲームセンターから少し距離がある。
若者で溢れかえる通りだが、平日なので人手はさほどでもない。自転車をとめて、カジュアルショップ周辺に広がるこじんまりとした地下街へと降りる。

473 追跡  ◆oJUBn2VTGE ウニ New! 2007/09/26(水) 21:08:51 ID:gAYKdkL30
聞いたことはあったが、来るのは初めてだった。
ファッションには疎いので今ひとつよくわからないが、とにかく流行っている雑貨屋らしい。和洋入り混じった色とりどりのアイテムを目の端に入れながらも、師匠の姿を探す。しかしその影はなかった。一応店員にそれとなく聞いてはみた
が、首を振るだけだった。

  雑貨屋でもやはり手掛かりはなかった。

溜息をついて『追跡』を閉じる。
連れが見えなくなったので探していると、カツラのコーナーにいた。「ウィッグ」だと訂正されたが、違いはわからなかった。
彼女はその後、血糊のついたようなデザインのピコピコハンマーが気になった様子で、散々俺を待たせたあげく結局別のものを買ったようだった。
店を出るとき、ゲームセンターのときにも感じた引っ掛かりがもう一度脳裏を過ぎる。
「次は……喫茶店です」
また自転車に乗って移動する。
地球防衛軍という怪しげな店名が出てくるが、俺も彼女も知らなかったので、『追跡』の描写を頼りにそれらしき通りをウロウロした結果、ようやくビルの窓
にその名前を見つけ出した。
古そうなビルの、知らない店に入るときは、階が上なほどドキドキする。
入り口のドアを開けると、やはりというか遊び心の多い内装が目に飛び込んで来た。フィギュアやミニカー、インベーダーゲーム、そして漫画が店内狭しとならんでいる。

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