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200 名前:中山雄介 投稿日:2001/03/07(水) 19:59
僕が驚きに言葉を失っていると、藤本は
「・・・まあ、入れよ。せっかくだから彼女にも会っていってくれよ」
と言い、ドアを開けたまま、僕にはお構いなしに中へ入ってしまいました。
僕はあわてて靴を脱ぎ、あとを追いかけました。
狭い玄関を入ると、すぐにキッチン兼用の短い廊下になっていて、その向こうには部屋に通じるらしいドアが見えました。
藤本はそのドアを開けると、部屋のほうへ向かって「友達が来たんだよ」と声をかけて中へ行きます。
僕もそのあとに続きました。
「突然ですいません。お邪魔します」
と部屋にいるはずの彼女にそう挨拶しながら部屋に足を踏み入れた僕は部屋の中を見て呆気にとられてしまいました。
そこには女の姿など影も形もなく、六畳ほどの部屋には家具と呼べるようなものはほとんど無く、代わりにコンビニやファーストフードの袋やカップ麺の開き容器などが散乱しています。
そしても奇妙なことに部屋の真ん中に縦横の幅が1メートルはあろうかという大きな水槽が1つ、頑丈そうなスチール台に置かれていました。
水槽にはなみなみと水が湛えられ、その中にはバレーボールほどの大きさの黒い藻の塊のようなものがゆらゆらと浮いていました。
「こついが俺の友達の中山だよ。ほら、前に話した筝っただろ」
僕の横に立っていた藤本は、誰もいない空間に向かってそう言いました。
「・・・お、おい、しっかりしろよ! 誰もいないじゃないか!」
「・・・誰もいないって・・・? 馬鹿な事言うなよ。彼女に失礼だろ」
藤本のその言葉に答えるように水槽の中の黒い藻がユラっとうごめきました。
そして藻の塊はゆるゆるとほどけるように水中に広がってゆき、その中央に何か白いものが見えました。
じっと目を凝らした僕はそれが何かを理解した途端、悲鳴を上げました
201 名前:中山雄介 投稿日:2001/03/07(水) 19:59
それは目を閉じた白い顔の女だったのです!
巨大の水槽の中に水に揺らめく黒髪に縁取られた女の生首が浮いていたのです。
僕が黒い藻だと思っていたものは女の髪でした。
水中に浮かんだ首だけの女は僕の目の前で閉じていたまぶたをぱつちりと開きました。
そして女は僕を見ると、色の無い唇をゆがめてニタリと笑ったのです。
次の瞬間僕は一目散に部屋を飛び出していました。
それっきり藤本には会いませんでした。
あの後、藤本は失踪してしまい、実家の家族が捜索願いを出したという事で、大学に警察が来て、いろいろと調べていたようでしたが、結局藤本の消息はつかめなかったとの事です。
失踪後、藤本の部屋には、巨大な空の水槽が残されていたと聞きました。